#詩

第26回国民文化祭・京都2011「現代詩フェスティバル」第26回国民文化祭京都府実行委員会会長賞 池山弘徳

「五月の誓い」 柔らかな 薄ももいろの そよ風が きみどり牧草絨毯の 上を ウェーブしながら 山の頂から 海へ向けて 流れておりますが この黒土の下には 共同殺処分された 牛さん達の 死体が うち重なり うち重なり 眠っているのです それでも 消石灰が 根…

モノトーン

「モノトーン」 絵のデッサンをするとき 何を省略するかがポイントだ 瞬時の選択をせまられる 人生を生きる時もおんなじだ 何を省略し 何かを捨てる いわば決断の連続だ 『二ついいことはない』と師は云う 白黒のモノトーンでもいい 一つに決めてゆく人生が…

砂漠という自然

「砂漠という自然」 ゴビの砂漠は人を寄せつけない どこからともなく吹き起る風にのって 砂は舞いすべてを覆いかくす 人間にかかわりを持とうとしない そうした自然もあるということを 私たちは忘れてはいないだろうか 興亡斗争をくりかえしてきた人類は 今…

弱さと平和

「弱さと平和」 自己の弱さを自覚することが 人間らしい人間になる第一歩 そこでは戦争など起こしはしない 弱いからこそもう少しもう少しと 努力をつみ重ねるものなのだ そこに人間向上の道がかくされている 弱さがあるから反省もする 心も豊かになり考えも…

選択

『選択』 己を知り 己を求めるのなら 静に坐り 静に語らねばならぬ 第三者のように語ることで己が見えてくる 内向的で 行動的でないからといって すべての人をそうとしてはならぬ 省みることを好まぬ人もずっと多い 人間の画一化の時代から 自己選択の時代…

自己活性化

『自己活性化』 無意識では人を殺し己を殺すことはない 問題は過剰意識が規制を破ることだ 学びと訓練を生きることの条件とする 己を捨てる無執着は仮定のものだ 己を活かし 他を活かすこの生命原理を 求道し 実行しやりぬくのが仏教だ 釈尊は四十五年 旅に…

見られる私見る私

見られる私見る私- どうにもならない点を見てゆくのと どうにかなる面を見てゆくのと あなたはどちらがお好き あなたを見ていられる方は どちらがお好きかな

山頭火に寄せて 帰らざる旅

『帰らざる旅』 昼食を野良猫にたべられ そのたべ残しをありがたく頂き 犬がくわえてきた餅をもらう 経五寸ほどの大きな餅を 最後の托鉢と書きしるす山頭火 自分は あまりに頑健だとも 日記がと絶えて 翌日倒れ その翌日 帰らざる旅に立った はてしない 巡礼…

山頭火に寄せて 末路を見る

『末路を見る』 彼にふさわしくない戦時下になって 志気高くあらねばならぬと 己を叱かりつゝも月をながめる山頭火 少々のお金が入ると早速に ふみ割った下駄の代りを買い まず一杯と酒にありつく山頭火 酒が己の公案だなどと格好をつけて 力んではみるもの…

静思湧言

やりぬくことが第一、上手下手は第二第三。 燃え上るもの噴き出すものがある時、ホンモノ人生となる。 私よりもっと近いもの、それが大いなるもの。 人に対して感銘、自然に対して畏敬。 いのちへの讃歌、真実への嘆声。 内向性のものに欠けるのが「思いっき…

山頭火に寄せて 山頭火の日記

『山頭火の日記』 キウリと水で一日をしのんでいたが ついに借銭をして米を買い 切手ハガキを買い たらふくたべる 泥酔 路上から連れかえられた 等々 克明に日記しているのはなぜか 己を責めお世話になった感謝の羅列 彼の日記は己を吐き出し 許しを乞い 自…

山頭火に寄せて 生と死のはざま

『生と死のはざま』 句作のために生きてゆくのか 生きるために句作が必要なのか その二つの重みを背負ってゆく山頭火 酒のうまさのために一杯 己の弱さのためにもう一杯 さらにもう一本と路上に己を失う なに人も責めはしないのに 己を責め巳を嘆き仏書を読…

山頭火に寄せて 朗読

『朗読』 山頭火旅日記の朗読は 実にうまかった ありがたかった 山頭火の口まねすれば そうなる 山頭火の淡々とした悲しみ 徳利一本の酒にトツトツとした喜び 朗読の渋い声音が行間の心情を伝える 朗読もあまり目立だないが見事な芸の世界 人柄がふっと匂う…

山頭火に寄せて 野宿

『野宿』 山路でしぐれる山頭火の旅 まんじゅ笠一つのおかげで 心の底までぬれそぼることもない 野宿のあけで弁当もなく 托鉢に柿を頂いてありかたい 空腹では読経の声が出ぬという 遍路さんだからと宿々で断わられ 倉庫に寝て 犬にほえられ 夜通しまんじり…

山頭火に寄せて 己をみつめる

『己をみつめる』 修行の旅というでもなく 人々からの遠ざかりでもなく 托鉢して世間の暖かさを知って投宿 三日も四目も宿屋につけず 一杯のんでふっくらとご気嫌になって 潮さいに眠りをとられて野宿 己をみつめ 自然をみつめ わびしさと喜びをかみしめ た…

山頭火に寄せて 至情 山頭火

『至情 山頭火』 戒律をきびしく守るでもなく といって戒をことさら破るでもなく そうせざるを得ない心情の旅 種田山頭火は己の弱さの故に 己をいつわりつくろうこともし得ず その至情にうながされて旅を続ける 山頭火の句はすき透った悲しさだ くずおれる一…

山頭火の旅

山頭火に寄せて 『山頭火の旅』 しょう恵 悲しみと喜びをおりまぜて 山頭火は 四国路を旅する 日に四里六里とひたすら歩いて 町に入って 数時間の行乞 得たもので木賃宿に一泊 米五六合 ゼニ四五十銭 宿銭に足らぬ時は 野宿 行乞に自信を失ったと嘆じ うすら…