三宝法典 第二部 第八項 討 論

 討 論
「ビクらよ、討論に三つの主題あり。過去に関し未来に関し、現在に関してなり。またビクらの討論の仕方によりてその人に討論の資格ありやいなやは知らるるなり。
 
まず問いをかけられ、一向説の問いに対して一向に説明せず、分別説の問いに対して分別して説明せず、捨置説の問いに対して捨ておかざれば、その人に討論の資格あらず。
 
また問いをかけられ、理と非理とを分けて立てず、おのれの主張を異ならしめ、他の説明を聞きて、われ解せりと言わず、質問すべき所を知らざれば、その人も討論の資格あらず。
 
また問いをかけられ、関係なきことを言い、他のことに言いまぎらし、怒りと不愉快をあらわすなれば、その人も討論の資格あらず。
 
また問いをかけられ、辻つまの合わざる例証をもち来たり、その例証をもって問う者をなじり、手を打って冷笑し、言葉じりをとらえて非難なすなれば、その人も討論の資格あらず。
 
またもし問いをかけられ、その問いに耳を傾けざる人は縁なきものなり。縁ある者は、一法を知り、一法を理解し、一法を捨て、一法を実現す。かくのごとくして解脱なすなり。
 
ビクらよ。執着をはなれて、心の解脱をなすことはこれ討論の目的なり。これ縁の目的なり。これ耳かたむくる目的なり。
 
怒りにさされ、うらみに満ち、おごれる人々の語る時は、徳を傷つけ、欠点をさぐり、他のあやまりと失敗を喜ぶ。聖者はかかる討論をなさず。賢者は討論の時を知り、法にかなえる聖なる行の説話を知る。賢者の討論をなすには、怒りにさされず、うらみなく、へりくだりてたかぶらず、法に従いてねたみなく、正しく賢く語るなり。
 
善き言葉を喜び、悪しき言葉を喜ばず。怒りをいだかず、欠点をさぐらず。関わりなきを言わず、関わりなき答をもって他を圧倒せず。いつわりのまじれる言葉をなさず。つねに教訓となり、他をこころよくなさしむるなり。」

南伝一七巻三二〇頁増支部三集第二大品