おりじなる童話 つるになった おかあさん

吉永光治のおりじなる童話

 つるになった おかあさん

あるむらに おひさという おんなのこが いました       

おひさは いつも ひとりぼっちです。

それは おひさが ちいさいとき おかあさんも おとうさんも しんでしまったからです。  

おひさに おかあさんが のこしてくれたものといったら おりがみで おった つるだけでした。

おひさは さみしいとき おりづると はなすのです。        

「つるさん おはなししましよ」 

おひさが なんど はなしかけても おりづるは へんじを してくれません。

でも おひさは おりづるに はなしかけていると おかあさんと はなしをしているようで うれしくなって くるのでした。

むらの やまやまが、まっかに そまると おひさは じっとして いることが できません。

やまみちを はしりまわっていると どこからか おかあさんが かおをだして

「おひさ おひさ」って よんでくれるような きがするのです。

おひさは ねるとき いつも おりづるを むねにだいて ねるのでした。

つきのひかりが まどからながれこんで おひさのかおを てらしていました。

「あっ つるがいない」

おひさが だいていた おりづるが ないのです。

「どこに いったの」

おひさは おきあがって おりづるを さがしました。

「あっ あんなところに いるわ」 

おりづるは おおきくなって まどのところに いました。 

おひさは おりづるのそばに いくと くびに そっと だきつきました。

おひさのみみに おかあさんのこえが きこえてきます。    

「おかあさんが よんでいるわ」

おひさは いつのまにか おりづるにのっていました。 

おりづるは おひさがのると まどから そらにむかって とびあがりました。

「おかあさんの ところへ いけるんだわ」

おひさは めをつぶると おりづるのくびに しっかり だきつきました。

おひさのてから あたたかいものが からだいっぱいに つたわって きました。

おひさは はっとして めをあけると おりづるは しろいはねのつるに かわっていました。 

つぎのあさ 二わのつるが なかよく きたへむかって とんでいくのを むらびとが みたということです。