おりじなる童話 よっぱらった き

吉永光治のおりじなる童話

 よっぱらった き

ゆうがた ガラガラー げんかんの ドアが あいた。

「ただいま~」

おとうさんの よろよろ ごえが きこえてきた。

「おさけ のんで きたんだ」

ぼくが げんかんに でてみると おとうさんが だいのじに なって ねていた。

「しようがない おとうさん。また こんなに のんできて」      

おかあさんは おとうさんの はなを つまむと おとうさんは くるしくて めをあけた。

「さあ おきてちょうだい」  

おかあさんは おとうさんを おこすと へやに つれていった。

「どうして あんなに おさけのむのかな」

ぼく おさけのんだときの おとうさん だいきらいだ。

このあいだ かいしゃから はやく かえってきて ひとりで ビール のんでたっけ。 

「おかあさん ビール のまんか」

おとうさんが ビールを コップに ついで いったけど おかあさん コップに くちもつけなかった。

「つきあい わるいなあ」

おとうさんは コップの ビールを そばの うえきの はちに ザーツとうつした。

「あらあら いつも うえきに ビールを かけると よっぱらうわよ」

おかあさんは おとうさんに ビールを ついだ。

よる ぼくは めがさめた。

ぼんやり てんじょうを みあげてたら

「さけもってこい」

どこかで こえがした。

「おとうさん まだ のんでるのかな」

ぼくは めを こすりながら いま(居間)に いった。

まめでんきが ついて へやは うすぐらかった。

「あれっ おとうさんの こえがしたんだけどなあ」

ぼくが へやに もどろうとしたら とつぜん うしろで こえがした。

「おさけ もってこい」       

ぼくは びっくりして ふりむいたら うえきが あかい かおをして わめいていた。        

「おさけは だめっ」

ぼくは おかあさんの くちまねで いった。

「はやく ビール のませろ」

きは からだを ゆすって さけんだ。

「やかましい」

ぼくは だいどころから みずを くんでくると きの くちに ザーッと ながしこんでやった。 

きは あかい かおから だんだん みどりいろに かわると だまってしまった。

「なにしてるの おおきな こえだして」

おかあさんが ねむそうな かおで たっていた。       

「あっ おかあさん。うえきばちの きが よっぱらって おさけ のませろっていってたよ」   

「そうなの。おとうさんが いつも うえきに ビールを のませるからじゃないの」

「おとうさんに ビール のませないように いって」

「はいはい おとうさんに いっておきますから はやく ねなさい」

ぼくはへやに もどると ふとんに もぐりこんだ。

「ほんとうに うえき よっぱらって いたんだから」

いつのまにか ぼくは ぐっすり ねむりこんでいった。