おりじなる童話 くるまにひかれたの だあれ

吉永光治のおりじなる童話

くるまにひかれたの だあれ

「うあー」

くみこが なきながら いえに かえって きました。

「どうしたの」

おかあさんが ききました。

「ひかれたの」

くみこは なみだを ちいさなてで ふきながら いいました。      

「だれが ひかれたの」 

「く・る・ま」 

「くるまが だれを ひいたの」

「いたい いたいって ないてたの」

くみこは いえの そとを ゆび さして いいました。

「えっ だれか みちで ひかれたのね。そこに つれていってごらん」  

おかあさんは くみこの でをとって そとに とびだしました。

このあいだ いえのいちかくで ともだちの あきちゃんが くるまにひかれて けがしたばかりなのです。

「どこなの」

「あっち」

おかあさんと くみこは はしっていきます。

「どこなの」

「あそこ」

どてのうえの ひろいみちを ゆびさしました。

「ここ」 

くみこは みちにでると すわりこんで いいました。

「ひかれたって だれも いないじゃない」

「ここで、ひかれたの」

「ほんとに ひかれたのね」


おかあさんは くみこを にらみました。

くみこは おかあさんの かおをみると とつぜん なきだしました。

「どうかしましたか」

おかあさんが ふりかえると、おまわりさんが たっていました。

「ええ こどもが ここで だれかが くるまに ひかれたっていうものですから」

「えっ くるまにひかれたってそりゃ たいへんだ」

おまわりさんは むねの ポケツトから てちょうを とりだすと くみこのまえに しゃがみこんで ききはじめました。 

「くるま どっちから きたの」

「あっち」

「くるま どんないろだった」

「あか」

「おとこのこ おんなのこ」

「わかんない」    

くみこは うつむいて いいました。

おまわりさんは てちょうに つぎつぎに かいていきました。

「ありがとう」

おまわりさんは くみこのあたまを なでながら たちあがりました。

「よく しらべてみないと わかりませんなあ…あっははは」

おまわりさんは わらいながら あいさつをすると いってしまいました。

それから なんにちかたった あるひ

「うあーん ひかれた」

くみこが なきながら いえに かえってきました。

「あら みみずじゃないの」

くみこの ゆびに ぺしゃんこに つぶれた みみずが のっていました。

「こうつうじこに あったのよ」

「えっ みみずの こうつうじこって あるかしら」

「みみずだって こうつうじこに あうんだから」

おかあさんは そんな くみこを みてると やさしいこだなあと うれしくなって くるのでした。