言葉と向き合い、紡ぐ 「辺見庸 ある死刑囚との対話」NHKEテレで15日
そんななか、大道寺の全句集を出すために奔走していた。大道寺は一九七四年に東京・丸の内で起こした爆弾テロ事件で、八人の死者と三百人以上の負傷者を出し、一九八七年に死刑が確定。逮捕以来三十七年間、獄中にあり、ある時から俳句を作ってきた。
咳(しわぶ)くや慚愧(ざんき)に震(ふる)ふまくらがり
外界と隔絶された拘置所で、多くの人びとを傷つけあやめた自分自身と、ひたすら向き合うことで生み出される数々の俳句。それらを辺見は「大道寺の体内と記憶から絞り出された、自発的な供述調書」と表現する。
東京拘置所で大道寺との面会を続ける辺見は、透明なアクリル板ごしに言ったという。
「獄中にいるあなたと、獄外にいるわれわれと、どちらがすさんでいるか、わかったものじゃない」。外の世界から切り離された大道寺という存在を通し、3・11後に失われてしまっている「言葉」を探そうとしていた。
<大道寺将司(だいどうじ・まさし)> 1948年生まれ。東アジア反日武装戦線“狼”部隊のメンバーで、お召し列車爆破未遂事件(虹作戦)や、三菱重工爆破を含む3件の「連続企業爆破事件」を起こし、75年逮捕、79年東京地裁で死刑判決、87年最高裁で死刑が確定した。2010年、がんと判明、獄中で闘病中。著作に「明けの星を見上げて」「死刑確定中」、句集に「友へ」「鴉の目」。