野田民主党はもはや政治主導を捨てた第二自民党でしかない。  岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■11月某日 野田総理の「自爆テロ」に近い破れかぶれ解散で、衆議院解散総選挙は15に近い群小政党の乱立で、大混迷模様だ。3年間の野党・浪人生活をおくった自民党は政権返り咲に必死な分、気合は入っている。安倍総裁は景気対策で日銀の金融無制限緩和や建設国債の買い取りまで求めている。再び自民党は公共事業へのバラマキを始めるという事だろう。離党者が続出した野田民主党もTPPと消費税増税で、党員に踏み絵を踏まして純化路線に切り替えた。党の政策に異議を唱えない条件で民主党の公認を決めた。違反者には返金が条件だという。前回の政権交代を成し遂げた民主党は公約を次々と投げ捨て、公約破りの消費税増税まで決議し、さらにTPPまで参加する方針というのだから、野田民主党はもはや政治主導を捨てた第二自民党でしかない。野田民主党の自爆解散は覚悟の上だろうが、既得権益のために自民、公明と連立を組む魂胆は十分にありそうだ。そうなれば、最悪の大連立独裁政権だ。
 選挙の焦点は、混戦模様の中で第三局がどうなるかだろう。しかし、第三局づくりで最初に動き始めた石原慎太郎代表、橋下徹代表代行の日本維新の会は、原発や消費税などの政策の違いを曖昧にしたままの選挙目的の野合でしかない。この野合路線のために切り捨てられた「減税日本」の河村代表も情けない。だいたい、減税と増税では政策は真逆であるし、河村代表は民主党時代から単なる目立ちたがりでしかなかった。選挙協力を表明しているみんなの党も含めて、政策よりも選挙目当ての野合である事は有権者にも見破られているはずだ。
国民の生活が第一」の小沢代表が検察審査会の指定弁護士による控訴審判決でも無罪となり、上告断念で無罪が確定した。にもかかわらず、直近のメディアの世論調査によると、「生活」の支持率は1%前後だという。携帯ではなく宅電による誘導調査のせいもあるだろうが、ホンマカイナ?という数字だが、政権交代直前から始まった検察や検察審査会という権力機構と大手メディア連合による小沢潰しのキャンペーンがいまだに尾を引いているという事だろう。孫埼亨氏の「アメリカに潰された政治家たち」(小学館)を読めばよくわかるが、霞が関と米国を敵に回した政治勢力は徹底的に妨害にあう。「アジア共同体」や「普天間基地の県外移設」を唱えた民主党初代総理の鳩山由紀夫を徹底的に潰したのは、戦後は一貫して米国と一蓮托生の途を歩んで来た霞ヶ関だった。鳩山元総理も遂に野田民主党と決別したが、遅すぎたし、野田民主党に落とし前をつけるためにも新党に再チャレンジすべきではないか
 今回の総選挙は、歴史的な政権交代から3年が経過した民主党に対する信任投票の側面もある。しかし、最初から政権交代の立役者である小沢一郎鳩山由紀夫が権力に狙い撃ちにされたことでスタートからつまずいた。機を見るに敏な菅直人は沖縄問題から遁走し、財務省主導の消費税増税を持ち出して参議院選挙で大惨敗し、ネジレ国会の原因をつくった。TPP参加の先鞭をつけたのも菅元総理である。唯一、評価できたのは原発から再生エネルギーへの転換を打ち出した事だろう。しかし、菅元総理には民主党をまとめる能力に欠けていた。いまだに、民主党は明確な脱原発の道筋もつけていない。最後のバトンを受け取った野田佳彦は最初から財務省と米国しか見ていない民意不在の政権だった。総選挙を戦わずして民主党はすでに崩壊したも同然だ。
 しかし、民主党マニフェストという国民との約束にこだわり続けているのが、小沢一郎である。いまだに本格的な動きは見せていないが、消費税増税反対、TPP反対、原発ゼロで政策が一致する「新党大地・真民主」「みどりの風」、「新党日本」、社民党亀井静香鳩山由紀夫山田正彦などの民主党離党組などとの強力な連携をはかり、日本維新の会との第三局の明確な対立軸をつくるべきではないか。争点隠しなど大手メディアの小沢無視の世論操作は凄まじい限りだが、その困難を乗り越えて、少なくとも民主党政権交代に期待した有権者の受け皿をつくるべきである。比例だけで1000万票を集める実力のある、選挙に強い剛腕・小沢一郎の最後の勝負を有権者にぜひ見せてもらいたいものだ。
2012.11.21