メディアの社会的責務は、権力チェックという原則など、もはや過去の遺物扱いである。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■7月某日 自業自得とはいえ、野田政権はまったくの四面楚歌状態である。足下の民主党からは離党グループや反消費税増税派が党内で批判勢力として居座っている。カンジンの参議院からも谷岡郁子議員ら3人が離党し、国民新党をクーデターで追放された亀井亜紀子議員らと合流し新会派を立ち上げた。中津川博郷衆議院議員も離党届を出して除籍処分を受けた。櫛の歯が抜けるように、民主党からの離党者は今後とも確実に続くだろう。特に注目されるのは、3か月の党員資格停止処分を受けた鳩山元総理派というべき20名の議員の動向。筆者的見立てでいえば、鳩山元総理が野田民主党とともに、次の総選挙を戦う可能性はゼロだ。鳩山元総理は小沢元代表と同様に、民主党政権交代時の原点に戻れ!という堅固な主張を持っている。野田総理とはもはや水と油である。小沢新党に合流するかどうかは別にして、反野田政権のスタンスにたった政治行動をとるのは確実だろう。政策の違いは当然としても、野田総理では次の総選挙は絶対に勝てないことに、民主党員が徐々に確信を持ち始めたからだ。
 小沢元代表が新党を立ち上げた時、大手メディアは世論調査の数字を上げて、期待も見通しもないとしてバッシングを浴びせた。大手マスコミの小沢嫌いは異常なまでの敵愾心にあふれている。大手メディアが消費税増税を仕掛けた財務省、財界、米国とともに既得権益の代弁者に成り下がっているためだ。しかし、野田民主党に対する期待度が徐々に消え失せてきた民意の変化に対しては、大手メディアはいまだに理解しようという姿勢を見せていない。時代の空気が読めないのだろう。メディアの社会的責務は、権力チェックという原則など、もはや過去の遺物扱いである。
 そんな中、朝日新聞が、アフガニスタンオスプレイの墜落で4人が死亡した事故に関して、事故調査委員長の空軍幹部が「エンジンの不調が事故につながった」という報告書を出したにも関わらず、米軍司令部は「機体不良」を認めず、事故調に対して内容を変更するように圧力をかけていた事実をスクープした。今や、オスプレイが安全な機体であることを信じる国民はいないのではないか。特に、世界一危険な米軍基地といわれる普天間基地への配備に関しては、沖縄県民のほとんどが反対の意思を明確にしている。それでも、米軍は、オスプレイ12機を岩国基地に強行配備する構えを見せている。野田総理は、日本がどうこう言える問題ではないと米国追従バカ発言。この総理発言に対して、親米派で安保マフィアの頭目ともいえる前原政調会長がいさめるという局面もあった。オスプレイ強行配備に対して、民主党は大きな火種を抱えてしまっているわけだが、空気の読めない野田総理はもはや重症である。
 大飯原発の原子炉2機の再稼働に対しても、国民の不信感は根強い。再稼働した後に、活断層の調査を関西電力に命じたというのも、本末転倒だ。いくら、牧野経済産業副大臣が立ち会いの上で再稼働のスイッチを入れたとしても、原発シロウトのこの人物にどんな責任が取れるというのか。東京では代々木公園で「反原発10万人集会」が開かれたが、予想を越えて17万人が集まったという(主催者発表)。プロの活動家ではなく、ネットで情報を知り、駆け付けた一般市民というところに、3・11で原発の危険な本質に目覚めた市民たちが、野田政権に対して、完全ある不信感や疑問を持ち始めているのだ。野田総理は、一刻も早く民意を問う総選挙を断行すべしである。これ以上、民意を無視した政策を野田総理にやらせておくと、確実に国益を失うことになるからだ。
2012.07.19