野田総理は実はしたたかで、図太い神経の持ち主だ。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■9月某日 民主党代表選は野田佳彦が圧勝で再選された。対抗馬が一本化できずに、将来的には期待される原口一博氏は党員・サポーターの支持を得ることは出来なかった。原口氏は代表選の最中に沖縄を訪問して普天間基地を視察したが、地元メディアはほとんど取り上げなかった。あくまでも相対的評価だが、4人の候補の中では沖縄の米軍基地問題に関する理解は深い方だ。沖縄メディアが強力にプッシュするくらいの姿勢を打ち出すべきではなかったのか。再選された野田総理は、再び「ノーサイドで行きましょう」などといって組閣や党役員人事で融和を打ち出すはずだ。しかし、民主党に残った議員たちは親米・官僚派ばかり.気概のある政治家は見当たらない。自民党政権よりタチの悪い官僚丸投げ政治に堕してしまった、亡国政治家ばかり。野田総理の対抗馬として急浮上するも、最後はハシゴを外された将来性はある細野豪環境大臣にしても、原発再稼働派の野田総理を全面サポートする役回り。今の民主党野田総理に異論を発することは、党内での地位の低下だけではなく、選挙時の公認を得られず除名の可能性すらある。現に、消費税増税に反対した党員たちは次々と離党を余儀なくされたではないか。まさにソフトファシズムの党に成り下がった。政権交代に大いなる期待を持った筆者も口あんぐりで、先行きがまったく見通せない絶望と閉塞感の時代に突入である。
 野田総理は実はしたたかで、図太い神経の持ち主だ。おそらく、「近い将来」と谷垣総裁に約束したという解散総選挙も確実に来年に持ち越されるはずだ。したたかに来年の任期いっぱいまで総理の座に居座る可能性も十分だ。三党合意で大連立した自民党公明党もいい面の皮だ。一人、高笑いしているのは、財務省だけだ。確かに日本は1000兆の赤字を抱えているが、国有財産も同程度もっている。消費税増税の為にメディアと国民をだましているだけだ。自民党総裁選をみていれば、誰が選ばれたとしても、野田の図太さに勝てるリーダーシップは期待できない。何しろ、消費税増税だけではなく、原発再稼働やオスプレイ強行配備にも賛成の面々ばかり。
 民主党自民党も、政策的にはほとんど違いがない。自民党憲法を改正して、竹島尖閣諸島自衛隊を強行配備するつもりかもしれないが、現実的な外交状況を緻密に分析すれば、それは絵空事にすぎない。むろん、戦争による解決しかありえないという国民的コンセンサスが得られるとは到底思えない。民主党の弱腰外交を自民党は批判しているが、自民党が政権をとってもほとんど民主党と同じような対応しか取りえないのではないか。実際、日本の防衛・外交を長期的に担ってきたのは自民党政権ではないか。原子力の平和利用という米国戦略に乗せられて、結局は福島第一原発の未曽有の史上最悪のメルトダウンに行きついた。その責任は民主党だけではなく、自民党にも責任の大半がある事実経過を忘れてはなるまい。
 その原子力に関しても、30年代原発ゼロの方向性は、米国、財界、原発立地の自治体の反対で、あえなく挫折。決定寸前の閣議決定も先送りされた。原発安全宣言も、オスプレイ安全宣言と同じくらい国民の生命と安全を無視した暴挙である。「原子力ムラ」の出自を持つ原子力規制員会の田中俊一委員長も民主党が独断で決めた。民意なんて関係ないのだ。消費税増税では政治生命を賭けてやり遂げると宣言した野田総理は、脱原発オスプレイ強行配備にはとんと興味がないようだ。あるのは、米国に強く要請されているTPP参加や集団的自衛権の確立である。ここまで対米従属で忠誠を示せば、米国が野田政権を死守してくれると思っているのかも知れないが、甘い。米国のしたたかさ戦略には日本の政治家や官僚が束になっても勝てるわけがない。敗戦のトラウマは外務省を中心に霞ヶ関官僚にしみついている。米国の狙いは自民、民主、公明と「日本維新の会」だけで二大政党の親米政権を日本に定着させることだ。まさにファシズムの時代到来だ。普天間基地へのオスプレイ配備も月内に強行される。沖縄は気分的には完全な反政府だ。民主党原口一博川内博史鳩山由紀夫らは野田政権を顔にした選挙戦では、勝てるわけがない。離党して、「国民の生活が第一」の小沢新党らとともに、日本版「オリーブの木」結成のビジョンに早急に取り組み始めたほうがいいのではないか。
2012.09.22