小出裕章「福島から京都に放射能が飛んできてることに怒って欲しかった」(たね蒔きジャーナル)

2011年8月15日、小出裕章氏が毎日放送たね蒔きジャーナルに出演しました。その内容を書き起こしました。
 
※初稿です。誤字はこれから修正していきます。

(書き起こし)

水野「では京都大学原子炉実験所助教小出裕章先生に伺います。小出さんこんばんわ」

小出「こんばんわ」

平野「こんばんわよろしくお願いします」

水野「今週もよろしくお願いします」

小出「よろしくお願いします」

水野「まず伺いたいのは。小出先生、週末に沖縄で講演をなさったというふうに聞いております。」

小出「はい」

水野「そこでは放射能と子供たちというテーマでおはなしなさったということですが。やはり沖縄はですね、ずーっと米軍の基地問題を抱えてはるわけですよね」

小出「はい」

水野「で、その沖縄の基地問題と小出先生のご専門の原子力発電の問題。これを関連させたお話しも出たと、聞いてるんですが。これどういうことをおっしゃったんでしょう」

小出「えー、弱い人達に犠牲をしわ寄せしたということです。」

水野「あー、つまり日本にある米軍基地の、本当に多くの部分が沖縄に集中してますけど。」

小出「はい」

水野「そうした、いったらまあ弱いところに、基地が押し付けられるという動きと原発もどうしても、ですね、やはりあの人口がどんどん過疎になっていくような弱い自治体のとこに、ま、これまでいっていたと。こういう意味でしょうか」

小出「そうです」

水野「はあー。これについて先生はどんなふうにお考えなんですか?」

小出「えーとみなさんご存知、でないかも知れませんけれども。沖縄という県は日本全国のえー面積で言うならば0.6%しかありません。その沖縄という県に在日米軍の75%が存在しています。」

水野「そうですねえー」

小出「はい。それを放置していわゆる本土の日本人は安穏と平和の、平和を謳歌しているわけで。えー、鳩山さんの民主党政権普天間を撤去するときも最低県外だといったのですけれども」

水野「そうでした」

小出「いつの間にか、また、沖縄に戻ってしまうというような。まあ私から見れば、本当に呆れるようなことがずっと続いてるのですね。それは原子力で私がずうっと40年間抵抗してきたと同じ問題で。本当にその困っている人達のところに金をちらつかせながら、力で押し付けていくというそういう歴史でした」

水野「また、具体的にですね。沖縄国際大学に米軍のヘリ、ヘリコプターが墜落した事故が、ありました。あれが7年前ですかね」

小出「7年前の8月13日です」

水野「あそうか」

小出「はい」

水野「じゃその8月13日に沖縄に」

小出「そうです」

水野「小出先生いらしてお話しなさってたわけですね」

小出「そうです」

水野「はあー。あの時にですね、あのー、放射性物質が関連していたというのは本当ですか」

小出「はい。えー、米軍のヘリコプターが、ヘリコプターのブレードという、まあ翼ですね。翼に欠陥があるかどうかということを、まあ46時中調べながら飛んでいるわけですけれども。その調べる装置にストロンチウム90という放射性物質を積んでいました」

水野「ストロンチウムというのは人体に非常に良くない影響を及ぼす…」

小出「そうです」

水野「ものだと以前おっしゃってましたよね、確か」

小出「そうです。はい。それがまあブレードの傷を調べるためには大変便利な放射性物質で。」

水野「へえー」

小出「それをヘリコプターが積んでいたのです。でそのヘリコプターが墜落してしまいまして、ストロンチウム90が行方不明になって、周辺に多分ばらまかれたというような事故でした。」

水野「平野さんあの時たしかね、沖縄県警が色々と、その場所を調査しようとしたら入れなかったんですよね」

平野「そうですよねえ。それで証拠物なんかも全部米軍が押収したというように聞いてますけど。先生その時のちょっとあの夕刊をですね、改めて見てるんですけども。かなりの量ですね。後に明らかになった、あのー、そのストロンチウムの量なんかも」

小出「はい。まあそれは私はかなりの量だと思いますし、普通の方々が吸入していいという、まあ、1年間にこれ以上吸入するなという量に換算すれば、550人分というそういうものがあの時に何処かに無くなってしまいました」

水野「えー。ストロンチウム90、が、これ以上は吸入してはダメという量の550人分」

小出「はい」

水野「はい」

小出「が無くなってしまったのです。だから私は大変なことだとその時は思いましたし。ずーっとそう思っていましたけれども、今、進行している福島原子力発電所の事故で言えば、え、それが1兆人分のまた、また何万人分(※何万倍の言い誤り)という、そういうようなものがすでに原子力発電所から放出されてしまっている、のです。」

水野「1兆人、1兆、人分とおっしゃいました?」

小出「そうです。それのまた何万倍というものです。」

水野「それのまた何万倍、なんですか」

小出「はい」

水野「はあー。」

小出「ですからもう、私はその沖縄国際大学に墜落したヘリコプターが、米軍のヘリコプターが積んでいたストロンチウム90自身も大変なことだと私は思ったのですけれども。もう今やそんなことはもう全然、問題にするにも足りないほどの膨大な汚染がすでに起きているということです。」

水野「はあーーーーーー」

平野「これ、ただ沖縄の方もですね、このヘリが日常的にこれ、と、あの、放射能搭載ヘリと言ってもいい」

小出「そうです」

平野「ヘリがもう飛んでるわけですよね」

小出「そうです。今でも飛んでいるのです。」

水野「これ、今でもふつうのコトなんですか、沖縄で」

小出「沖縄の人たちにとってはもう日常、毎日の生活がそうなっているのです」

平野「んー」

水野「あの時、日本が色々立ち入って調査できなかったというわけがどうなんだろうと思っておりましたけど。そこには放射性物質の存在があったかも知れないわけですね」

小出「もちろんそうです。ですから米軍はヘリコプターが墜落したらすぐにその場を封鎖して放射線検知器を持って、一帯を調査をして、そしてヘリコプターはもちろん墜落した現場の土も全部掘り起こして一切の証拠を消したんです。」

水野「はあーーー。そういうことが実は今も起こりうる危険として」

小出「毎日沖縄ではあるのです。」

平野「これはだけど場合によっては被ばくした人がいるかもわからないというそういうこと…」

小出「もちろんそういう事です」

平野「ですよねえ」

小出「まああの米軍の人達がその現場で仕事をしたわけですから、1番吸入した可能性のあるのは彼らです。ですしまあ、その周りを沖縄県警、日本のまあ警察が米軍を守って、その周辺にいた人たちを米軍の作業に介入しないように阻止したんですね。ですから沖縄県警の人たちもまた被曝をしたでしょうし、現場で集まっていた沖縄の人たちも被曝をしただろうと私は危惧しています」

水野「わたくし沖縄国際大学一回行かせてもらったときに、目の前にヘリコプターが落ちてきてもう本当に、すんでのところで助かった人にもお会いしたんですが。このことは全くおっしゃっておりませんでした」

小出「はい。当時はあまり知った人がいなかったと思います」

水野「はあー」

平野「夕刊、この日の記事はでも書いてあるんですよね。ストロンチウム90って」

小出「はい」

水野「ただわたくしその時に、私も読んでいたのかも知れないんですが」

平野「はあもうその意識の我々のねえ」

水野「ストロンチウムという物質の意味を」

平野「そうですねえ」

水野「知らないできてたんですね」

小出「そうですね」

水野「こうやって小出さんのお話を聞いて初めて、ストロンチウムとはなんぞやと知ってこの情報を聞くと、また全然違う意味が読み取れてきますよねえ」

平野「そうですねえ」

小出「はい」

水野「知らないということはどんなに罪深いかと、あの思います。えー、まあ沖縄でその時におっしゃったお話に、こう強い、ということと優しいっていうことを比較しておはなしなさったって聞いたんですが」

小出「はい」

水野「これはどういう事ですか」

小出「えー、みなさんも多分御存知だと思いますけど。モーリスチャンドラー(※レイモンド・チャンドラーの誤り)という米国の作家がいて」

水野「レイモンド・チャンドラー

小出「はい。彼の遺作にプレイバックという小説があるのですけれども。そのプレイバックにチャンドラーが、『強くなければ生きていられない。優しくなれないなら生きている価値がない』と書いているんですね。でまあ、みんな今、私も生きてるし、水野さんも平野さんも生きているのでそれなりにまあ強いんだと思いますけれども、チャンドラーは強い、くても、生きている価値がないという人がいるということを言ってるわけですね。生きてる価値というのは何なのかというなら、優しくなるということだと、言っているわけで。いったい優しいってどういうことなのかなあとわたしはいつも、思います。んでそれは、私の今の思っていることは、強いものに付き従うことではないと、思っていて。日本の政府というのは米軍に、いや米国に付き従うのが国益だというようなことを言うわけですけども。全く優しくない政府だなと思う、のですね。えー、でもそういう生き方というのはチャンドラーからすれば、生きる価値がないと言ってるわけで。本当にどういう生き方をするのが生きる価値があるといえるのかと私自身が毎日、自問しながら生きているとそういうことを、考えたので皆さんにお伝えしようと思ったのです。」

水野「はあー。今この、ねえ、放射性物質がいろんなところに飛んでしまって、これからも色んなリスクを抱えた中で私たちがどう生きるかですよねえ」

小出「そうです」

水野「あのー、一言だけ伺いたいんですけども。この京都の五山の送り火で、えー、陸前高田の松を燃やすか燃やさないかという2転3転ありました」

小出「はい」

水野「どんな思いでご覧になってましたか」

小出「はあー…(※深くため息)。まあなんとも重苦しい気持ちですけれども。なんでこんな瑣末なことで、えー、今苦しんでいる人たちに余計また苦しみを負わせるのかなあと。私は思い、ました。もちろん、放射能はどんな意味でも危険。ですから、えー放射能を含んでいる松を燃やせばもちろんそれで危険が上乗せされるということは確実にそうです。しかしそんな事言うなら、福島からもう京都だって放射能が飛んできてるわけですから。そのことにこそ京都の人たちは怒って欲しいし、原子力発電というものがどういうものかということに、声を上げて欲しいと思いますけれども。え…、陸前高田の人たちにいったい何の罪があったのかと。何の罪もない、ないまま汚染をされて、その汚染も本当に微々たると私から見れば思うような汚染をことさらに取り上げてそれを拒否するというようなことは、私からみるとほんとうに悲しいことだと思います。」

水野「うーん。それこそ、まあ小出さんのおっしゃる、強さ優しさどう捉えるかっていうことにつながるのかも知れません。」

小出「はい」

水野「はい。どうもありがとうございました」

小出「ありがとうございました」

水野「京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんに伺いました」

(書き起こし、ここまで)

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