沖縄の本土復帰後最大規模の集会が開かれた。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

2013.02.04
■2月某日 遂に「建白書」なるものを安倍総理に突き付ける事態にまで発展した沖縄の普天間基地県外移設とオスプレイ配備反対の抗議行動。県内41市町村長代表らが日比谷野外音楽堂での集会を呼びかけ、約4000人が集まった。集会の後は、銀座の数寄屋橋公園までデモ行進も行われた。政府の中枢ともいえる霞ヶ関や永田町に隣接する日比谷公園で沖縄の本土復帰後最大規模の集会が開かれたのだ。沖縄差別としか思えない長期にわたる横暴な米軍基地政策に県民の怒りが爆発した抗議行動だった。
  しかし、政府側の対米追従一辺倒の姿勢に変化はなかった。安倍総理は抗議団との面談すら及び腰で、実質的には5分間だけの形式的面談となった。安倍総理の頭の中は強い経済と日米同盟関係の強化しかなく、沖縄は振興資金をやるから黙って従えといわんばかりの態度に終始していた。抗議団との面談を渋った安倍総理は、その直後に沖縄を訪問し、仲井真知事との面談を求めた。しかも、県庁でも知事公邸でもなく、民間のホテルでの会談となった。会談内容も、つい先日閣議決定された沖縄関係振興予算3001億円、一括交付金1613億円、別枠予算で那覇空港第二滑走路の工期短縮と総額200億円も決まったことで、安倍総理は胸を張り、仲井真知事が謝意を表するという図式だった。カンジンの普天間基地に関しても辺野古新基地を進める意向を打ちだし、政府は強行突破の姿勢を示唆した。一体、何のための沖縄訪問だったのか、不可解そのものだった。今月、オバマ大統領への表敬訪問を予定している安倍総理だけに、沖縄との友好関係をアピールしたかったのかもしれない。
   しかし建白書でも打ち出されたように、実態は安倍総理や政府の願望とは正反対である。もはや、沖縄では振興予算というアメと引き換えに、オスプレイ配備や辺野古新基地建設というムチに屈するほどヤワな県民ではなくなっている。その事実に対して政府は気づかないふりをしているつもりなのか。いや違うだろう。政府としては確信犯的行為なのだ。しかし、辺野古新基地建設を強行すれば、沖縄は分断化され、日米関係も最悪の事態に発展することは誰の目にも明らかだ。オスプレイの墜落事故にしても同じだ。防衛省や外務省のエリート高官たちがその判断をできないとすれば、戦後の対米従属路線で服従の思想で完璧に洗脳され、その目的遂行のためには沖縄は犠牲になっても仕方がないというドグマのせいだろう。
  問題は辺野古移設を推進する自民党本部と沖縄選出の自民党議員たちが普天間基地の県外移設という公約で当選したこととの整合性をどうするのか。数の論理で押し切ることは簡単だろうが、沖縄と政府の対立も決定的になる。沖縄側としては今回の東京行動の超党派による建白書の趣旨を今後も引き続き執拗に訴え続けることだ。場合によっては、米国政府やオバマ大統領にも建白書を直接届けて、沖縄の置かれている現状を直訴することである。今回の東京行動に関しては全国紙や地方紙でも無視した新聞もあった。所詮、沖縄の米軍基地問題は他人事という意識もあるのだろう。消費税増税に関して新聞業界は「軽減税率」の導入をアピールしている。庶民は増税に苦しんでも、新聞メディアに対しては特別扱いを平然と求める感覚じたいが、すでに反庶民、反国民のスタンスに立っていることが明らかだ。財務省主導の消費税増税じたいを後押ししたという新聞の罪もある。
  安倍総理は強い経済を執拗に打ち出し、今年度予算は補正予算もあわせて100兆円を超えた。国土強靭化の名のもとに公共事業のバラマキ政策も次々と打ち出している。こちらも、景気浮揚と消費税増税のための布石づくり、そして7月の参議院選挙を意識した選挙対策だろうが、安倍総理の思惑通りに進むとは到底思えない。当然、沖縄問題しかりである。
http://www.uwashin.com/2004/indexdiary.html