野田民主党のふてぶてしさは群を抜いている。国民の生活よりも自分たちの処世術だけしか念頭にないのだ。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■10月某日 オスプレイが強行配備され、さっそく本島各地で飛行訓練する中、米海軍の兵士二人による20代の沖縄女性に対する集団暴行事件が起きた。この兵士による暴行事件は本島中部の繁華街に近い民間の駐車場で行われたため、米軍のMPではなく沖縄県警の手によって逮捕され、起訴に向けた取り調べが行われている。沖縄が本土復帰する以前の米軍統治下時代から繰り返し行われてきた、米兵による猥褻・強姦事件は数限りない。日々軍事訓練に明け暮れ、時にはイラクやアフガンの戦場に送られる米軍兵は、ストレスやトラウマを抱え、現実逃避の薬物にも手を出しやすい環境にある。今回の米兵二人は逮捕された直後にはグアムの米軍基地に移動の予定だった。「どうせ、捕まらないだろうし、明日からはグアムだ」という思いが米兵にあったのではないか。まして、沖縄は米国の植民地・属国くらいの差別意識を持ち合わせていたのではないか。
 沖縄県民の怒りが広がるにつれ、在日米軍司令官のアンジェラ氏は、在日米軍兵士に対して「夜間外出禁止令」を出した。毎度毎度の米軍のヤリクチである。ほとぼりがさめる頃合いを見て、なし崩しに外出禁止令を解除するのだ。だいたい、基地外にアパートを借りて住んでいる米兵も多い。こうした米兵たちは適用外なのだろう。基地・軍隊を許さない行動する女たちの会の高里鈴代代表は、基地からの外出じたいに反対している。嘉手納基地などの米軍基地は広大であり、レストランや飲食店、スーパー、ゴルフ場、娯楽施設、米軍専用ビーチまで完備しており、日常生活には何の不自由もない「ミニ・アメリカ」となっている。皆が皆というわけではないが、戦場でPTSDを患った米兵も少なくない。そんな兵士を基地外に出すことは、「危ない病人」を街に離すようなものではないか。
 オスプレイ岩国基地に飛行して、普天間基地にもどってくる訓練も開始した。筆者の住む那覇市新都心上空もオスプレイが平然と飛行する。密集した市街地は(なるべく)飛ばないという日米合意案など、完全無視である。近いうちに、仲井真県知事がワシントンに飛んで、沖縄の米軍基地の危険性と日米地位協定の改定を訴える予定になっている。日本政府が何も言えないのだから、最大の被害者である沖縄県が米国政府に直訴するのは当然だろう。「近いうちに」をバカの一つ覚えのように繰り返す野田総理自民党安倍総裁と公明党山口代表の三者会談がようやく開かれたが、完全決裂。自民党公明党を手玉に取る野田―輿石コンビは一筋縄ではいかない図太い連中だ。惨敗が見えている解散総選挙をやるわけがないのだ。来年度予算も自分たちでやる気満々で、メディアは年内解散総選挙を煽っているが、野田民主党にすれば、「そんなの関係ない!オッパッピ!」(古いか、笑)だろう。内外ともに難題が山積みする中で、野田民主党のふてぶてしさは群を抜いている。国民の生活よりも自分たちの処世術だけしか念頭にないのだ。
 そんな中、若松孝二監督がタクシーにひかれ、頭や腰を強打し、5日後に帰らぬ人となった。若松監督とは新宿ゴールデン街の「銀河系」や新宿二丁目の「ブラ」でよくあった。付き合い歴は30年くらいになる。「水のないプール」(82年)以前はピンク映画で異彩を放つ監督だった。元新宿ヤクザの手下時代に、映画のロケ―ションを仕切ったことがきっかけで映画界入り。パレスチナにわたり日本赤軍とともに行動した足立正夫監督を通じて、日本赤軍の支援者でもあった。筆者が沖縄に移住してからも「キャタピラー」、「実録 連合赤軍 あさま山荘への道程」、「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」といった力作を次々と世に出した。4年ほど前、若松さんが大病を克服した直後に新宿で飲んだことがあるが、映画に賭ける執念はいささかも衰えることなく、ますます情熱を傾けていたことが印象的だった。まだまだ撮りたい作品はたくさんあったはずだけに、惜しまれる死だった。合掌!
 あ、「週刊朝日」で佐野眞一氏が橋下徹大阪市長の出自を書いた記事に関し、連載第一回目で朝日出版側がお詫びを出して連載そのものを中止した件は、共同通信文化部のコメント取材に応じたので、明日以降の沖縄タイムス琉球新報などの地方紙を参照して欲しい。
2012.10.19