いずれ墜落事故で多大な犠牲者が出る可能性はかなり高い。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記


■7月某日 遂に、米国のサンジェゴを出港したオスプレイの搬送船が岩国基地に接岸し、12機の機体のすべてを陸揚げした。山口県の岩国市や沖縄全土、そして全国6か所で予定されるオスプレイの配備と訓練には反対の声が圧倒的に多く、世論調査でも6割以上が反対しても、日米両政府は予定通り強硬路線でやってきた。先日、朝日新聞がすっぱ抜いたオスプレイの事故調査に対して、軍の最高幹部が調査委に対して内容の改ざんを要求していた事実がスクープされたにもかかわらず、だ。MV22オスプレイがアフガン戦争時に墜落したケースの事故調査への圧力の一件だ。米国側は一貫してオスプレイの機体じたいに問題はなく、単なる技術上の問題だと一蹴している。
 その背後には米国の軍費削減政策と密な関係にある軍需産業海兵隊によるオスプレイに生き残りを賭ける米軍の軍事戦略が背景にあるためだ。さすがに前原政調会長が、沖縄や国内世論無視の米軍に対して再交渉する意向を示したが、既に海兵隊オスプレイを日本に向けて搬送中だった。前原政調会長としてはポスト・野田を意識した次の代表選に向けたアピールであり、米国に対してやるだけやったというパフォーマンスをしておくべきだったという判断だろう。
 それにしても、野田総理に乞われて防衛大臣に就任した森本敏氏のあたふたしたあわてぶりにはガッカリだ。防衛評論家として、日米安保や沖縄基地問題に関してテレビでコメントしていた時代の論理性や情報力は皆無である。防衛大臣という役職が森本氏を無難で決断力も実行力もない人格に変えてしまったのか。それとも、もともと日米安保マフィア的なスタンスから発言してきた人物だけに、単に本性が出ただけなのか。評論家時代の森本氏とは二度ほどテレビでディスカッションする機会があった。米国に対するスタンスは相いれるものではなかったが、沖縄の基地問題や米国政府に対する森本氏の情報力はなかなかのものがあると感じたこともある。とりあえず、日米両政府ともに、オスプレイの安全性が確認されるまでは飛行訓練はしないと明言し、森本大臣も米国に日本の調査団を送り、事故原因を究明したいとしているが、信じる国民はほとんどいないだろう。
 米国が反対の声を押し切って岩国基地オスプレイを荷揚げした事実から見ても、岩国から普天間基地に配備し、その後は本土の山間部で低空飛行訓練に踏み切る事は既定事実と判断するしかない。どうせ、日本が米国と米軍の政治的包囲網の中で、事故原因の究明などできるわけがなく、最後は米国の言いなりで押し切られることは目に見えている。森本大臣もそのアリバイ作りに利用されるだけのことだ。日米安保体制の中では、米軍が新機種に変更して日本の米軍基地に配備することを禁じる項目はない。米軍の自由意志なのだ。ならば、日米安保そのものを含めて、日米地位協定の抜本的見直しを徹底してやらない限り、日本の上空で欠陥機であるオスプレイが飛び交い、いずれ墜落事故で多大な犠牲者が出る可能性はかなり高い。受け入れる沖縄側としても、オスプレイ配備反対の島ぐるみ闘争で、日米両政府を動かすしか術はない。それが出来なければ沖縄は米国の属国として日本政府に利用され続けるだけだ。
 バカ騒ぎで終わったフジテレビのFNS27時間テレビでのタモリを久々に見てがっかりしたが、いよいよロンドンオリンピックも始まる。間違いなく各局各紙のフィバー報道が連日繰り広げられるのだろうが、その陰では原発再稼働、消費税増税の策謀、オスプレイの強行配備、TPPの陰謀が進行する事実だけは忘れてなるまい。それでいいのか、ニッポン、チャチャチャ!(苦笑)。
2012.07.23