世界一危険な米軍基地で、大事故でも起こしたらどうなるのか。 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■8月某日 連日のようにメディアを中心にフィバーしたロンドンオリンピックが閉幕した。日本は金、銀、銅を合わせると、史上最多のメダルをとったという。一応は、健闘した選手諸氏に対してはおめでとうと言いたいが、銅メダルをめぐる3位決定戦の「女子バレー」と「男子サッカー」が行われる前日、韓国の李明博大統領が独島(竹島)に初上陸するという動きがあった。明らかに政治的効果を狙った李大統領の国内向けのパフォーマンスである事は明白だが、その行為に韓国のサッカー選手が影響されたのか、試合終了後に韓国人サポーターから受け取った「独島は韓国の領土」と書かれた紙を掲げて競技場を周回。さすがに、五輪憲章に反すると判断したオリンピック委員会が問題視し、FIFAの調査次第では問題の選手のメダル剥奪も危機にあるという。その翌日には香港から尖閣(魚釣島)へ向けて抗議の船が出航した。さらに、台湾の抗議船も尖閣に向かう予定だ。石原都知事尖閣買収と上陸の申請が出ているため、それに呼応した行動であることは間違いないだろう。オリンピックでナショナリズムを煽られた結果でなければいいが、歴史的にも政治とオリンピックが紙一重であるという事実だけは見ておく必要があるだろう。
 それはともかく、沖縄国際大学に米軍の軍用ヘリが墜落して13日で8年目の夏を迎えた。地元のQAB(琉球朝日放送)では「漂流16年 普天間移設合意から16年」という特番を放送し、沖国大でも反対の集会などが開かれた。04年8月初旬、筆者が沖縄を拠点にするようになった直後の墜落事故だった。地元警察もメディアも事故現場から徹底排除され、まるで治外法権のような米軍の振る舞いに怒りがこみ上げた。筆者の沖縄移住が長くなったのも、この沖国大へのヘリ墜落事故が影響している。この事故の際、福島原発事故でおなじみとなった放射能防護服の部隊が出動している。軍用ヘリの羽の部分に放射性物質(ストロンチウム)がつかわれていたため、米軍は事故機の機体や破片だけでなく、墜落場所の土までごっそり持ち去ったといわれる。筆者もその時の写真は知人から入手したが、沖国大、もしくは普天間基地ストロンチウムは大丈夫なのか。もしストロンチウム90ならば、半減期は28・8年とされている。
 つい先日は、沖縄復帰直前までベトナム戦争で使われた残りが貯蔵されていた枯葉剤を米国内の自治領に持ち去った事実も米軍の資料で初めて明らかになった。近々、強行配備を目論むオスプレイにしても、防衛省は昨年までひた隠しにしてきた。米軍も事故率も低く発表し、後に修正して事故率の高さも証明された。オスプレイ普天間基地だけでなく、ほぼ沖縄本島全域で訓練が予定されている。しかも、夜間の訓練もこれまでのCH46よりも4倍に増えるといわれている。世界一危険な米軍基地で、大事故でも起こしたらどうなるのか。米軍も日本政府も沖縄県民の事は何も考えていないのだ。同じく配備が予定されているハワイでは、地元の反対や環境問題などに配慮して飛行中止も決めている。国土の広い米国の場合、砂漠や無人地域、海に向けてオスプレイを飛ばすというが、普天間基地は過密な市街地にあるのだ。
 先の大戦後、米国は「われわれが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利」を持つという米国の認識はサンフランシスコ講和条約時点で決められていたのだ。そのことを「戦後史の正体」(創元社)で「米国からの圧力というタブー」として明快に書いたのが、孫埼亨氏である。元外務省の国際情報局長だが、共同通信や「エコノミスト」(毎日新聞)に書評を頼まれたので、この本をぜひ紹介したいと思っている。これほど、目から鱗の感動本を読んだのは久しぶりだ。当ブログの読者にもぜひ一読をおすすめしたい。
2012.08.13