仏教による幸福への成功方式 #14(第二章三論 欲求と病気 )

欲求と病気  
 欲求は人間の心と体とを動かす因であるが、この欲求が不正不調となれば病気となります。次に発病五因をかかげます。
 1、心因-無明と愛、十悪心等
 2、体因-過労、外傷、外境
 3、日光-生命力の不足、細菌、ヴィールス、薬
 4、呼吸-不正呼吸
 5、食 -偏食、不正食 

 この心、体、日光、呼吸、食の五因が欲求に従って不正となれば発病、改善されれば治病となります。

 二の体因は俺は病気したことないから、少々無理しても大丈夫と無理したり、不注意から傷をうけたり、打ち身をしたりの過労や外傷、寒いところ、暑いところ、風の吹きさらし湿り気の多いところ、乾きすぎたところの五つの悪い外境に長い間、身体をおくと病気にまけ易くなる。しかしこれだけでは発病しにくいので、一の心因が加わると発病し易くなります。三の日光による生命力の不足から生じる菌因はお医者の最も得意とするところで、菌を見つけ出すと、その菌を殺す薬を考案して、対策を立てます。まことに結構ですが、あまりに薬に頼り過ぎると菌を殺すほどの強い薬は、身体の内部までやっつけることになり易いのです。この菌と心のつながりは分かりにくいものですが、総合的な身体の調子がよいことが、つまり生命力の充実が菌に対する抵抗力をもつことを考えると、やはり心と関係があります。

 体と菌について、専門的に対策して下さるのがお医者さんですから、これは一応任せて大いに成績を上げて貰いましょう。そしてそのお医者の成績を上げる根本の原因つまり心因を自分の力、信仰の力によって改善しましょう。そして日光を充分に受け生命力を吸収し健康への転機とすることを信じかつ行じましょう。四の呼吸、五の食については他の項で説明しますので、ここでまずこの五因の根本たる心因を考えてみましょう。

 心因とは-感情的な緊張のことです。外部から色々の刺激を受けると、その刺激は間脳(大脳の下部にある豆粒大の小器管)に全部集められます。すると間脳は直ちに脳下垂体を通して副腎に命令を伝えます。これはホルモンによって命令をするので、神経よりも早く力強いのです。この副腎は大豆より一寸大きい位のもので腎臓の上にありその皮目から三十種もの沢山のホルモンをビタミンCを使って作り出すのですが、命令が来るとそれに応じた必要なホルモンを直ちに作り、血液に送りこみ、その刺激に対抗して身体を守るようにします。しかしこのホルモンはかねて、ストックされていないので、あまり長く刺激が続くと遂に副腎がくたびれて抵抗しきれなくなって発病となります。

 各種の刺激がありますが、外境から来る、例えば火によるやけどなど、話が分かり易いですが(これでも訓練によってはやけどしにくいものです。しかし火渡の術というのは薪が燃えさかった後に清めの塩をふって裸足で歩きますが、この塩は冷やす働きがあります。精神統一訓練法ではありますが、信仰とは無関係なのに御注意)心の状態による刺激は肉体の各部を緊張させて全身的にしかも、原因らしいことを感じさせにくくして発病させるので困ります。しかしこれにも一定の法則があります。現代のアメリカ医学はこれを実験的にかなり正確につかんでおります。もっとも個人個人で緊張するところの違いはありますが、大体似たところがありますので参考になるでしょう。

 恐怖-脳への血管がちぢまり、ひどいときは気絶したりします。映画ではこうした場面がよく出てきます。プロレスの空手チョップは相手の首の血管をパッとたたくと、血が脳にゆかなくなるのでぱったり倒れるのです。

 嫌悪、心配、恐怖-胃のちぢみ、吐き気、食欲不振となります。こうした心の刺激に対してもっとも敏感なのが、胃と心臓なのです。胃はその入り口をぎゅっとしめてしまいますので、無理に食べても吐いてしまうのです。そうした時には、血は頭にいってしまって胃や腸のまわりは貧血してしまっているので、食物が入ってきても消化する働きをすることができません。もし無理に食べれば、それは皆毒になりますから、その時は水を飲むのが一番よい。この状態が続くと胃カタルや胃酸過多などになり、やがて胃潰瘍、胃ガンと進みます。 

 怒り、極度の不安-胃のまわりや、特に腹部(腸)が緊張します。腹を立てた時を想像してその姿をしてみて下さい。歯をむいて拳を握りしめてウーンと身体中に力を入れてみて下さい。腸に力がこもるのが分かるでしょう。それが腹痛の原因です。腸カタル、消化不良となるわけです。勿論便秘にもなるわけです。腹を立てた後に、痛くなるのはこうした理由です。昔の人は腹を立てるとうまい言葉を使いましたね。どうしたら治るか、腹を寝せるのです。すべての病気治し、安静とは、この腹を寝せて、脳にゆき易い血を身体中に分散させることなのです。つまり横になれば、興奮も納まるということです。横になって難問題を考えて下さい。つい起き上がってしまいます。寝ていては夫婦ゲンカもしにくいものです。想像して下さい。炭火をおこす時、炭を立てかけておけばおこり、皆横に寝せてしまえばおこりません。炭火のように真っ赤におこらぬように。
 (実行)怒が生じた時、誰も居ない部屋で静かに右脇を下にして、足と足をのばして重ね、しばらく静かに呼吸する、或いはあてつけでも何でもいいから、掃除とか、物の整理とかなるべく身体を使ってする、血が手足に分散して納まる。前もって、あてつけが始まった時は相手は無言で遠ざかっているというルールを決めておくこと。

 右下腹部がけいれんすれば、盲腸炎と間違えられ、右上腹部のけいれんが胆のう炎を引き起こし、長い間の心配が結石を作り上げ、小腸がけいれんを続けるとガスが発生する。このガスの発生の九十%以上が心因からとなっています。 
 興奮-怒り、悲しみ、憎しみ等のみならず、激しい喜びなどもいけません。心臓がどきどきするということは、心の動きの激しさを意味するので、非常な栄養の浪費のみならず、心臓病、心筋梗塞、心筋炎、血管血流の病気となって現われます。

 心痛-沢山の病気の原因となります。皮膚病の三十%がそうです。これは真皮層の毛細血管がちぢみ、その為に血清が皮膚組織にたまり、やがて皮膚は固くなり、赤くなり、ただれ、かさぶた、かゆみとなる。又心痛は首すじや肩の筋肉をよけいに使うので、そこがこり易くなります。のどのはれ、めまい頭痛、疲労、便秘などの八十~九十%は心因です。失望や不満は胃酸過多、突然の驚きは下痢、死の恐怖が続くと性腺の機能が衰える。

 強い性欲-性腺が興奮し肺のリンパ節を刺激し、肺を過敏にして、やがて疲れ、抵抗力をなくし菌にまけて肺病となる。体はその腺を活動的にして体を守ろうとするので、ますます性的に興奮し易くなります。思春期に発病し易いこと、色情問題と関係が深いことを考えて下さい。

  五因→間脳→副腎→血液→神経→筋肉
    
 刺激→     緊張と抵抗     ←発病

 心因による病気は脱力感、痔、十二指腸潰瘍、関節リューマチ、神経痛、喘息、アレルギー、ノイローゼ、精神病、ヒステリー、便秘、ジンマシン等数えきれないようにあります。この心因というものは全くつかまえどころがないもので、本人もはっきり気がつかないことが多く、心の奥の方にしこりとなっているので(仏教でいう執着)そうした問題に手なれた方にまことの心因を突き止めて貰わぬと手おくれになることがしばしばです。又たとえ自分がこれが悩みの種だなと気づいていても、心因がいかに力強く、治りにくい病気を作り出すかが、一般の常識となっていない為に、あまり積極的に心因を取り除こうと努力することはないのです。又その努力をしても要領を知らない為に効果も上がらないという次第。しかし賢明な読者は、早くこうした点の常識を得て、自己の幸福を確実につかんで下さい。ここで数字を並べる余裕がありませんので、ご自分の体験を生かして早くのみこんで下さい。

 この心因は細菌やヴィールス以上の感染力を持ち、発病の王たる原因となるものです。過度の刺激-副腎のはれ→リンパ系のちぢみ→胃のただれ→心臓の出血という誰にも共通の状態を引き出すことを忘れずに。こうして不快↓苦痛となるのです。要するに不快とは結局、心のわずらいが内蔵などに過度の刺激を与える時の感じ、ということです。

 私共が病気をうけず、快と楽を得る為にはまず何よりも、心因の安定が第一となります。
この心因の安定に全力を集中する最も合理的でかつ心理学的で、しかも徹底的なのが世尊の仏教です。どの経典を開いてもすべて心の問題の解明です。それは単なる道徳や上品な観念論といったものではなく、私共の奥の、どん底のみにくい心と、一方における又尊い心をえぐり出して、完全に分析し、再構成して、正覚という誰でもならねばならぬ理想の状態へと、導いてくれるものなのです。

「もの皆、心を先とし、心を長とし、心より成る。汚れし心にてもの言い、かつ行なえば、牛にひかれる車が従うように、苦しみが心についてくる」

「かれ我を罵れり。打てり、敗れたり、我がものを奪えり、とこの念を抱く人には、怨みのしずまることなし」
            
                           (法句経)