三宝法典 第二部 第六六項 七つの衰えざる法

七つの衰えざる法

時に世尊、ラージャガハのギッシャクータ山にとどまりたまえり。    

マガダの国王、アジャータサットは隣国のワッジー国を攻めんとして雨行大臣に命じたり「雨行よ、おんみは世尊のみもとに参りてねんごろに挨拶なし、わがためにみ教えを請い、世尊の仰せを記憶して帰るべし。み仏けの仰せはいつわりなきが故に。」と。

大臣は車をととのえ、世尊のみもとに参り、挨拶を申し上げ、王がワッジー国を攻めんとなすを問いたれば、世尊はみ後ろにてあおぎつつありしアーナンダをかえりみて仰せられたり。 

「アーナンダよ「おんみはワッジー国の人々、しばしばあい集まりて政治をはかり、集まる人多しと聞くや。」

「世尊、われ聞けり。」                     

「さらばワッジー国は繁栄のみありて衰えざるなり。アーナンダよ、おんみはまた、かの国の人々、上下つねに和合し、団結して国の事をなし、定められたる法を敬いてみだりに改めず、法に従いて行動し、年長者を尊敬し供養し、その言をよく聞き、婦女に暴力を用いず、又みたまやを尊敬し供養し、儀式を捨てず。聖者らに対して正当の保護をし、聖者らきたらば。安らかに住せしめんとなすと聞くや。」

「世尊、われ聞けり。」                  

「雨行よ、われかってベーサーリーのサーランダダ廟にとどまりたる時、ワッジーの人々のために、この七つの衰えざる法を説けり。雨行よ、この七つの法がワッジーの人々に守られつつある間は、ワッジー人に繁栄のみありて衰えざるなり。」

これを聞きて雨行大臣は申し上げたり。 

「一つの衰えざる法を行うもワッジー国は繁栄のみありて衰えざるなり。まして七つの法を守らばなおさらなり。アジャータサット王は外交政策、離間策以外の戦争はなすべからざるなり。」と。歓喜して礼拝しそこを去り、王に告げて戦さをとどめしめたり。 

かくて世尊はアーナンダに命じたまいて、この山のビクをことごとく講堂に集め、その前に坐して法を説きたまえり。

「ビクらよ、われ今、おんみらのために七つの衰えざる法を説かん。あきらかに聞きてよく思念なすべし。

ビクらよ、しばしばあい集まりて法を習え、集まる者多き間は道は久しく繁栄なすならん。上下互いに和合しサンガの行事を行い、法を立て規律を守り、みだりにこれを改めず。年長者を尊敬し供養し、その言をよく聞き、のちの生存をもたらすがごとき愛欲をもたず、静かなる所にて修道し、よき修道者きたらんとして安らかに住せしめんとなすなれば、道は久しく繁栄のみありて衰えざるなり。

また七つの衰えざる法あり。行事の多きを喜ばず、かかわらず、談話の多きを喜ばず、かかわらず。眠りを喜ばず、かかわらず、世間を喜ばず、かかわらず。悪しき欲望を持たず、悪しき友とならず。覚りへの到達を中途にて止めざれば、道は久しく繁栄なすならん。

また七つの法あり。如来を信じ、足らざるを恥じ、悪しきを恥じ、多く聞き、勤め行い、思念をたやさず、深き知恵をもつなれば、道は久しく繁栄なすならん。

また正しき思念をなし、法をえらびて研修し、精進をなし、喜びを味い、心身の安らぎを修め、心の統一を行い、捨てさりを修むる間は、道は久しく繁栄なすならん。

またさらに六つの衰えざる法を説かん。ビクにして修道者の間において、他に対しても、おのれ一人の時にも、慈愛の行いをなし、慈愛の言葉を口にし、慈愛の心をもち、サンガの規定にしたがいて得られたるものは、たんに一鉢に入れられしものまで、共に分配して食する間は、道は久しく繁栄するならん。」と。

南伝七巻二七頁長部第一六大般ネハン経南伝二〇巻二五二頁増支部七集第三ワッジー品(七覚支)念覚・択法・精進・喜・軽安・定・行捨  
(七想を略す)無常・無我・不浄・苦・捨離・離情・滅想