おりじなる童話 のはらのドア

 吉永光治のおりじなる童話

のはらのドア

きつねが やまを おりて いきました。
 
やまを おりて いくと のはらに でました。    
 
きつねは どんどこ あるいて いくと もりの いりぐちに やってきました。

「あれっ なんだろう」
 
もりの いりぐちに おおきな ドアが ありました。      
 
「ドアなんか ついちゃって どうしたんだろう」 

きつねは ドアを そっと おしました。

でも あきません。
 
「どうして あかないのかな。もりに いけ ないや」
 
ドアを ひきましたが あきません。
 
きつねは りょうてで ちからいっぱい ひっぱりました。
 
「うあっ」 
 
すつてん ころりん ころんで しまいました。  

「いうこと きかないと けっとばすぞ」
 
きつねは

「えいっ」

ドアを ちから いっぱい けっとばしました。

「あいたた あいてて あいたたた」
 
きつねは ドアの まわりを うろうろ していました。  

「なにしてるの」 
 
そらから こえがしました。
 
「あっ きりんさん ドアの むこう のぞいて くれない?」   

きつねは みあげて いいました。

「いいわ のぞいて あげる」

きりんは ながい くびを すーっと のばすと ドアの むこうを のぞこうと しました。
 
どうしても のぞくことが できません。

「ふしぎだわ。ちっとも のぞけない。くびが だるくなっちゃった」 
 
きつねは ドアを みあげて くび を ぐるぐる まわすばかりでした。

「みんな なに さわいでいるの」

ぞうが じまんの はなを ふりながら きました。

ぞうさん このドア あけてよ」

「ふうん こんな ドアなんか ひとおしさ」

ぞうは ドアに あたまを ぐっと おしあてました。      
 
ぞうさん、がんばって」
 
みんなで おうえんするたび  ぞうの あしに ちからが はいります。  

「うあっ うごいた うごいたぞ」 

とつぜん きつねが さけびました。
 
でも うごいたのは ドアでは ありません。それは ぞうの おおきな からだでした。

ぞうさんでも だめなんだね」
 
みんなは かおをくみあわせ ためいきを つきました。

あひるが うたいながら やって きました。

「おやおや どうしたの」 

「ドアが あかないの。ド、ア、が」

みんな いっせいに いいました。
「あらまあ そうなの おさきに」

あひるは おしりを ふりふり ドアの

よこを とおりぬけて いってしまいました。

よしなが・みつはる氏は1937年生まれ。日本人類言語学会会員 童謡詩人、童話作家。講演活動中。福岡市在住。