三宝法典 第二部 第三三項 嫁と姑

 嫁と姑

サーバッティーに信仰厚き青年あり、父親死して老い先みじかき母親に、妻も迎えず孝養をつくせり。母親は一人のよき娘を見出して嫁となし、一家和合し、青年は時おり精舎に参り、世尊のみ教えを喜べり。
 
嫁は時に心変わりなし、姑を憎み、別居なさしめんと夫にせまり、争い続きで夫妻あい別れんとせるも、青年は世尊の御加護を受けつつこれを忍び、ついに妻も心折れてふたたび家中に喜びの声わきたり。
 
青年は精舎に参り法を聞きて喜び、世尊の母を大切になしつつあるやとの仰せに、始終を物語りたり。
 
世尊はこの青年をはげまして昔話をなしたまえり。
  
「在家者よ、おんみのごとき家庭ありしも、嫁は夫にしいて姑を別居せしめたり。間もなく妻は出産をなして、姑の出でしがためにかくのごとく善き子を得たりと言いふらせり。姑は人づてにこれを聞きて怒り『かくては世の中に正しき法は死せりと言うべし。正しき法の葬式をなさん』と、気もたかぶり墓場にゆきて水に入り、身を清め白き衣をつけ髪を乱して米をとぎ始めたり。
 
これを見出せる帝釈天はあわれに思い、姑に問答をなせり。
  
『さらば悪しき嫁も孫もわが火にて焼きつくさん』

『神よ、なにとぞ嫁も孫も焼きたもうことなく守りたまえ』

『女よ、おんみが悪しき扱いを受くるも、おんみ自身正しき法を捨てざれば、おんみらはむつまじく暮らすならん。勤めて善を修めよ』と。

かくのごとくさとして帝釈天は姿を消したれば、息子と嫁は母をたずね来たれり。かくて罪を詫びてともない帰り、一家は和合して暮らせり。
 
在家者よ、みずから法を捨てざる者には、法は永久に死することなし。母に孝養をつくして家内むつまじく暮らすべし。」と。

南伝三三巻一頁小部第八第一章四一七

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