三宝法典 第二部 第三一項 流木の譬え

流木の譬え
 
時に世尊、コーサンビーの郊外に出でてガンジス河の岸辺に立たれ、材木の流れきたるを見たまいて仰せられたり。          

「ビクらよ、かの流木を見るや。かの流木が両岸に近づかず、中流にて沈まず、陸へも打上げられず、人にも取られず、非人にも取られず、渦にも巻きこまれずして内より腐らずば、かの流木は海に入り、海にとどまるならん。     

ビクらよ、おんみらも又かくのごとくニバーナに入り、ニバーナにとどまるならん。何ゆえなれば、正見はニバーナに導くものなればなり。」
  
「ビクらよ、こちらの岸とは眼・耳・鼻・舌・身、向こうの岸とは色・声・香・味・触のことなり。中流に沈むとは、欲楽に沈むことなり。陸へ打上げられるとは我慢のことなり。人に取らるるとは、ビクが在家の人にまじわり喜びと悲しみを同じくし、楽しみと苦しみを同じくし、起こりくる用事にて自らかれらの仲間入りなすことなり。非人に取らるるとは、ビクが戒行により苦行により清浄の行により、天界に生まれ神とならんとなすことなり。
 
渦に巻きこまるるとは五欲にとらえらるることなり。内より腐るとはビクの性質悪しく戒を守らず、不浄にして善に勇まず、自らのなせるを包みかくし、清浄の行者にあらずして清浄の行者と見せ、内の腐れ出ずることなり。」
 
その時、牛飼いのナンダ、世尊の近くに立ちて法話を聞き、世尊に出家を願えり。
  
「ナンダよ、まずその牛を主人に返し来たるべし。」
 
仰せのごとくナンダは、牛を返し来たりてふたたび出家と受戒を願い、これを許されて精進し、間もなく覚りを開きたり。

南伝一五巻二八一頁相応部六処篇第一六処相応毒陀品第四木塊

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