三宝法典 第二部 第一一項 まことの幸福

まことの幸福
  
「マハーナーマよ、かつてわれ、ニガンダの人々と問答せり。
  
『ゴータマよ、幸福は幸福によりて得られず、苦しみによりて得らるるなり。もし幸福によりて幸福に達し得るなれば、ビンビサーラ王は幸福に達するならん。何ゆえなればビンビサーラ王はゴータマよりも、現在はるかに多く幸福に暮らしつつあるがゆえなり。』
  
『おんみは気ままにかくのごとく申すことなかれ。はたしてビンビサーラ王は、われよりも幸福に暮らしつつありや。』
  
『おおゴータマよ、やや気ままに申したるがごとし。改めて問う。二人のうちいずれが幸福に暮らしつつありや。』
  
『ニガンダの人々よ、われ問わん。おんみらはいかに思うや。ビンビサーラ王は肉体を動かさず、言葉を発せず、七日七夜、まことの幸福をおぼえて住することを得るや。』

『そは不可能なり。』
  
『王は六日六夜、あるいは一日一夜、肉体を動かさず、言葉を発せず、まことの幸福をおぼえて住することを得るや。』  

『そは不可能なり。』
  
『人々よ、われは一日一夜、また七日七夜に至るまで、わずかにも肉体を動かさず、言葉を発せず、まことの幸福をおぼえて住することを得るなり。』

マハーナーマよ、かくのごときがその問答なり。」

マハーナーマは、世尊の仰せを喜びて家に帰りたり。

南伝九巻一四九頁中部第一四苦蘊小経