三宝聖典 第一部 六四項

夫妻の手本

バッガ国の三人の長者、おのおの精舎を造り、世尊を迎えたてまつりたれば、世尊は正導の旅をなしたまい、中途ベーサカラー林に安居したまえり。多くの人々みもとに参り法を聞けり。
 
ナクラの父、ナクラの母と呼ばるるもの、世尊を深く信仰し、生涯変ることなき在家信者たることを誓えり。翌日、世尊をご招待し、食後ナクラの父は申し上げたり。

「わが家内、幼時よりの知り合いにて、若くして縁を結びでよりこのかた、心の片すみにも操のくもりなし。この世においてあい見ることを得たるがごとく、来世にてもあい見る法を聞かしめたまえ。」
 
ナクラの母もまたかくのごとく申し上げたり。
  
「信仰を同じくせよ、規律を同じくせよ、聞法を同じくせよ、布施の心を同じくせよ、知恵を同じくせよ。されば来世にてもあい見ることを得ん。」
 
世尊かくのごとく説きたまい、のちにこの二人を互いに信じ合う夫妻の手本とたたえたまえり。
南伝一八巻一〇七頁増支部四集第一福生