三宝聖典 第一部 五九項 形式と内観

形式と内観 

時に世尊、マッラー人のアヌイヤ町に入りたまえり。托鉢の中途。修行者バガバを訪れたまえば、バガバはスナカタがシャカムニのみもとより離れたるを申し上げたり。

「バガバよ、おんみの言えるがごとし。スナカタは先日わがもとに来たり、超人の法、神通を見せざるゆえに去ると申せり。われはスナカタに告げたり。『われ、おんみに来たれよ、わがもとに往せよ。われ超人の法、神通を示さんと約したることなし。わが教えはまさしく苦なき境界に入らしむるものなり。これにつきて神通を示すと、示さざるとにいかなる相違ありや。
 
おんみはかつて郷里にてブッダとダンマとサンガとの徳をたたえたり。しかるに今、おんみこの清浄の行よりしりぞけば、人々はおんみが清浄の行を行うにたえざる故にしりぞきたりと言うべし。』

『スナカタよ、先年われウタラカ町におりし時、おんみをつきそい人として托鉢せしことあり。その時、裸行者のカッテヤは犬戒を守り、四つばいになりて口にて地面の食をとれり。おんみはこれをたたえたれば、われはそのあやまりを非難し、この犬戒行者は七日目に腹の病いにて死すべしと予言し、わが言のごとくになれり。にもかかわらず、おんみは形の教えにとらわれてあり。』
 
バガバよ、種々に説きたるも、形にのみとらわれて内を見ることを得ざるかれは、ついにわが道よりしりぞきたり。」
 
「大徳よ、われは大徳およびその聖弟子達をそしるものにあやまりあるを信ずるなり。大徳よ、われに清らかなる覚りに入る法を説きたもうべし。」
 
「バガバよ、おんみのごとく異なれる教えに属し、異なれる信念と見解とを有して、清らかなる覚りに入らんとなすは難し。おんみはわれにいだく信仰を守るがよろしかるべし。」バガバは喜びて仰せのごとく誓えり。