「三宝」71号 五つの幸福原理 #4(実行原理)

 Ⅲ、実行原理(一)

 問題を解決し、目的に到達するためには、やらねばなりません。現代人はすべての面で自信を失っています。異状とゆかぬまでも半ノイローゼといった人が多いのはまことに困ったことです。

 青年がよく訴えます。「うちこんでやれるような仕事をみつけたい。」「自信をもってやれるようになりたい。」と。自信と成功を得るためには、経験と実績が問題です。よい実績をつみ重ねた時に私たちは自信を持つようになります。しかし経験し、実行する前にやらねばならないこと三つがあります。

 考える(習う)(考えない)-実行-結果

 まずよく考える。参考になることを調べる。習えることはなるべく詳しく習う。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。しかし、時にはあれこれ考えずにまずやってみるということも大切。この三つの心構えが、時に応じて使いわけられるとしめたもの。
さて実行原理とは八つの項目から成り立ちます。

 目的、信念、言葉、自律、仕事、努力、集中、深識

 1、目的-何をやるか目的を確立することが第一。こんな分かりきったことと思いやすいが、実は漠然とああしたいこうしたいで始めてみる、うまくゆかぬ時は止めるといった
ことが多いものです。これではうまくゆかぬのが当然。

 目的を立てるためには、考えることです。現代青年は考える力が弱いと云われ、会社は考える人間を求めるということですが、考えるのは、やさしいようで難しいものです。単にいろいろな知識を持っているというだけでは足りません。何が正しいか、何か善いことであるか。自分にとってプラスになり他の人にとってマイナスになるのであるか、このような価値判断が出来るようにならねばなりません。現在のように利益本位の考え方になれてしまうと、人間の本当の幸福を実現するという人生の目的を見失ってしまいます。

 どんな目的を立てるにしても、それが自分個人の幸福、多数の幸福の方向にそっているかということを考えにいれないと、いつか途中で反省の心や迷いが出てきて、やりかえたり止めたりするので、ムダになってしまいます。実行することに意義があるので、結果は問題でないという考え方もありますが、これば人生勉強の段階であって、本当は結果が大事なはずです。人間はただ漠然と生きるものではなく、生まれてきた以上、その人生を充実させるように生きない限り、不安で苦しくてたまらないものです。人生を実らせて、それを他に伝えるようにして、死んでゆきますが、実った人生は自分をとりまく他の中に、つまり真理法の世界に生きるということが出来ます。そうしたことを誰でもがはっきり望むわけではありませんが、心の奥底ではもしそうなれたらいいなあという気持は必ず持っております。それが死を恐れる心、死後も永遠に生きたい心となって現れます。

 さて目的を立てたなら、それを紙に書き、表に書くこと。そしてあとから考えついたことなどをどんどんつけ加え、まずいことを切り捨てること。

 会社の事務所などにゆくと、売上目標額が大きくはり出してあります。しかしそれの実現方法や参考意見などは書いてありません。つまりただ抽象的に金額だけを考えているので、実現図とならないのです。小学校で教える時、いろいろ図を示して分かりやすいことは必ず頭の中に入るというようにします。よく分かっていないことは図に書いてみると、妙な図になってその欠点が一目で分かります。子供ではない大人だぞと思うかもしれませんが、これからやるのだ、初めてなのだというのであれば、そのことに関しては小学生になったつもりで、いろいろな図を書いてはっきりさせることが成功の第一歩。初心忘るべからず。そんなことしなくてもちゃんと頭の中に入っているという人は、それを他人から批判されることを嫌っているせまい心なのでしょう。

 2、信念-目的を立て、考えるだけ考え、習えるだけ習ったとします。そしてどの点から考えても、実現出来ると信じなければなりません。これが信念です。念とは強い心と云うほどの意味。出来るかどうかあやぶんでいては実行にも力が入りません、必ず出来ると思うからこそカが入ります。碁を打っている時、負けそうだなあと思ったらもういい手も考えつかなくなります。やろうという決意、やりぬこうという熱意、なにくそという気力、精神力がこの信念です。「なせばなる、なさねばならぬ何ごとも、ならぬは人のなさぬなりけり」こうした心力は、広い理性や経験、相互関係に対する信頼感、人間としての善意といったものを土台として育てられるものですが、この信念が、行動を起こす原動力となるものです。信念を強める工夫を大いにせねばなりません。

 3、言葉-思わぬことは口に出ないと云われますが、言葉は心に応じて出てきます。逆に言葉が心を作り上げてゆくことも事実です。私たちは人から云われた言葉で、腹を立てたり喜んだりするように、自分で言った言葉に随分と影響を受けます。そこで明るい言葉、積極的な言葉を使うことが大切。言葉に魔術の力があると云われる位。

 そこで次ぎの四つの言葉は使ってならないとされる。①うそ-自分の心がけがれ、人が信用しなくなる。②悪ロ-どんな場合にも云って得することはない。③もめ言葉-こっちの人にこう云い、あっちの人にああ云うでは両者はもめるにちがいない。④かざり言葉-もってまわった云い方で相手を煙りにまいても、やがて自分が煙りになっては大変。自分にプラスになるよい話し方を学習したいもの。