(2)生きるとは心を通して物を見ること 吉永光治

 桃水和尚は橋の上から流れゆく水を眺め、また水の流れる音に耳を傾け己を忘れ愉しんでいた。そこへ一人の村人が通りかかって桃水和尚に声をかけた。「何を眺めていられるのですか」「水だ」その答えに村人はとまどった。そこでこんどは持っている葵の花に眼をやって聞いた。「これは何の花ですか」「葵だ」桃水和尚はぶっきら棒に答えた。

 村人は、「葵ならなぜ花が赤いのですか」と単刀直入に言った。桃水和尚は、村人の手をとって、「橋というのにあなたはどうして橋の中央を通りなさるのか」村人は桃水の手をふり払うと黙って走り去った。桃水和尚が楽しんでいる一時をうばった事に対して村人に教えたのである。言葉をかける時、話し相手が何をしているか知った上で相手に話しかけることが大切なのではないでしょうか。