経集 39

39.恰かも鹿が林野にて縛されずして、食を求めて欲する処に行くが如く、有識の人は独在の自由をば観察しつゝ、犀角の如く応に独り遊行すべし。南伝大蔵経 第二十四巻小部経典二 一 蛇 品 三 犀角経 十五頁)
野獣が林の中に捉はれなく、何処へでも食を求めてゆくのと同じく、目ざめた人の自在なのを見て、犀の角のようにたゞ一人歩いてゆかう。(毎田周一訳 釈尊にまのあたり 一周会刊)
林の中にありて、しばられざるけものが、食を求めて好む所におもむくが如く、智ある者は己の好めるままに、一人遊行なすこと犀牛の如くせよ。(田辺聖恵訳)
林の中にあるとは俗塵を離れること。しばられざるとは己の欲望に束縛されないこと。食を求めるとは最低托鉢の生活ということ。こうして大智を求め大智に安住する者は、なに人にもいかなる権威もあてにする必要がない。真の独立者とは自己自身と斗い、己を克服したものである。斗うべき相手は己である。田辺聖恵