松のほまれ 松尾多勢子 第十八
第十八 刀自児孫を従軍せしめたる後なほ京都に止まる
刀自、児孫等を、従軍せしめたる後は、なほ輦轂の下に止まり、しばらく身を同士三輪田元綱の家に寄せ、後また岩倉卿の家に入りて、客分となり、専ら国事の為めに奔走せり。
当時、三輪田真佐子女史もまた、同家にありて、子女育英のことに従事し居けるが、こゝに刀自と親善の交はりを結ぶに及んで、膠漆もたゞならざるの間柄となり、互に相助けて、王事に力を致さんことを約したり。
かくて、慶応四年八月に至り、兵乱全く止み、誠等みな千軍万馬の間に立ちて、九死に一生を得て帰京し、互にその無事を祝したりき。
故郷へかへる折真佐子のきみにおくる
同し返し 真 佐 子
(松のかほり 清水謹一著 公論社刊より)
刀自、児孫等を、従軍せしめたる後は、なほ輦轂の下に止まり、しばらく身を同士三輪田元綱の家に寄せ、後また岩倉卿の家に入りて、客分となり、専ら国事の為めに奔走せり。
当時、三輪田真佐子女史もまた、同家にありて、子女育英のことに従事し居けるが、こゝに刀自と親善の交はりを結ぶに及んで、膠漆もたゞならざるの間柄となり、互に相助けて、王事に力を致さんことを約したり。
かくて、慶応四年八月に至り、兵乱全く止み、誠等みな千軍万馬の間に立ちて、九死に一生を得て帰京し、互にその無事を祝したりき。
故郷へかへる折真佐子のきみにおくる
た せ 子
別れては老いずしなぬに年をへて
よのうるはしきたよりをまつ同し返し 真 佐 子
忘るなよ思ひもいでんかへりては
老いずしなぬにはなをながめて(松のかほり 清水謹一著 公論社刊より)