おりじなる童話 ふしぎなサボテン

吉永光治のおりじなる童話

ふしぎなサボテン

やまさんが よみせで サボテンを かいました。             

「さあさあ ふしぎな サボテンだよ。しろい おおきな はなが さくよ。かった かった」          

やまさんは ちょうしのよい こえに すいこまれるように てを だして かってし まいました。

いそいで いえに かえって やまさんは ふくろから そっと サボテンを だしました。

「なあんだ ふつうの サボテンと ちっとも かわらないじゃないか」

やまさんは よみせの おじさんに もしかしたら だまされたのかな と ふと おもいました。

「せっかく かってきたんだからな」

やまさんは うらにわの おんしつに いれて おきました。

「バサ バサッ バサ バサッ」

おおきな ものおとに よなか やまさんは めを さましました。

「なんの おとだろう」

やまさんは めを こすりこすり おきあがりました。

まどから つきの ひかりが ながれこんで いました。

「バサ バサッ バサ バサッ」

うらの おんしつの ほうから きこえて くるようです。

やまさんは いえを でました。

つきが あかるく にわを てらして います。

おんしつは しーんと しずかです。

「へんだな ゆめでも みてたのかな」

やまさんは おんしつに ちかよって ドアの すきまから なかを のぞきました。

「あーっ」

やまさんは びっくり こえを のみこみました。

よみせで やまさんが かってきた サボテンが おおきく ふくれあがって あかいはなを さかせて いました。

「おじさんの いっていたのは ほんとうだったんだな…でも どうして あかいはな なんだろう」      

あまりの きれいさに やまさんは いきを ころして みていました。

「あれれっ」      

あかいはなが きゅうに あたまを さげると しぼみ はじめました。

「なんだ もう しぼんじゃうのかな」

はなは しぼんでしまうと あたまのほう から くるくるっと まきあがり はじめました。     

「あっ」    

はなは あかいいろから しろいいろに かわると あたまから からだ からだから はね はねから あしへと おおきな つる に かわって いきました。

「わっ つるだ」 

やまさんは いつのまにか ドアを あけて いました。

つるは すーっと とびあがると つきに むかって とんでいきました。


あれから サボテンには はなが いちども さきません。

でも やまさんは いつか きっと はながさくと おもって だいじに そだてています。