おりじなる童話 おばけとんぼ

吉永光治のおりじなる童話

  おばけとんぼ


ぼくがあそびから かえるとちゅう はしを わたっていたら かわらを トンボが すいすい とんでいた。 

「うあい トンボだ。とりに いこうっと」   

ぼくは いそいで はしを わたって いえに かえった。 

うらにわの そうこから あみと むしかごを だしてきた。

「あっ そうだ。かわらに ひとりで あそびに いっては いけませんよって おかあさん いってたっけ」

ぼくは けんちゃんと いっしょに いくことにした。

けんちゃんの いえは かわむこうの だんちに あるんだ。

「けんちゃん とんぼ とりに いこうよ」

ぼくは げんかんにたって よんだ でも へんじは なかった。

ぼくは いえの うらに まわったけど ドアが しまっていた。

「なーんだ るすか ひとりでいこう」

ぼくは かわらに むかった。

はしを わたると トンボが すいすい とんでいた。

ぼくは かわらに おりると あみを ふりまわした。

「それっ つかまえた」

「そらっ にがすものか」

かわらを はしり まわっているうちに かごの なかは トンボで いっぱいに なった。

「うわーい たくさん つかまえちゃった。けんちゃん びっくりするぞ」

ぼくは うれしくて かごを たかく もちあげたら トンボの はねが キラキラ ひかった。

かわらから ぼくが あがろうとしたら あたまのうえで ぶるんぶるんと おおきな おとがした。

「あっ おばけトンボだ」

おおきな トンボが いっぴき はねを ふるわせて とんでいた。

トンボの めが ぼくを にらんでいるみたいだ。

ぼくは こわくなった。

かわらを かけあがって ふりむくと トンボが すごい はやさで ぼくを おいかけてきた。

「うあっ」

ぼくは じめんに はらばいになった。 

あたまの うえを すごい はやさで うなりながら とおりすぎていった。

ぼくは あみを なげすてて かごを かかえて はしった。

「ああこわかった」

ぼくは いえに とびこむと ほっとした。

へやが さっと くらくなった。

「あれっ」

ぼくは まどをみた。

おばけトンボが まどいっぱいに めだまを ぎょろぎょろ ひからせて にらんでいた、

ぼくは かごを だいて すわりこんだ。

そのとき ぼくの みみに こえが きこえた。


かえせ かえせ なかまを かえせ

かえせ かえせ なかまを かえせ

ぼくは いつのまにか かごの ふたを あけていた。

かごから とびだした とんぼは まどに むかって とんでいった。

「あーっ」

トンボは まどがらすに すいこまれるように きえていった。

けんちゃんが おばけトンボ みたっていってたけれど ほんと だったんだな。