おりじなる童話 ガラスのコップの話

吉永光治のおりじなる童話

  ガラスのコップの話

だれがおとして わったのか 

ガラスのコップが ないていた

つきよのばんに ないていた

コップのなきごえ きいたのか

にわのこおろぎ やってきて

ガラスのコップに ききました

「どうして ないているのです」

コップはなきなき いいました

「わたしはコップ われたとたんに すてられて それで ないているのです」

こおろぎ ころころきいてから

こおろぎ ころころいいました

「あなたは われてもコップです わたしがしねば ただのつち ころころなけない ただのつち」

コップは はなしをきいてから なくのを やっとやめました

だれがおとして わったのか

ガラスのコップが ないていた

やみよのばんに ないていた

コップのなきごえ きいたのか

にわのこおろぎ やってきて

ガラスのコップに ききました

「どうして ないているのです」

コップはなきなき いいました

「わたしは なんにもしないのに あのこのあしを けがさした それで ないているのです」

こおろぎ ころころきいてから

こおろぎ ころころいいました

「あなたのせいでは ありません あのこのせいでも ありません」

コップは はなしをきいてから なくのを やっとやめました

だれがおとして わったのか

ガラスのコップが かわいそう

つきよのばんに こおろぎが

コップのなきごえ きえたので

にわにころころ いきました

ガラスのコップは ありません

どこにもどこにも ありません

どこかで こえがしたようで

こおろぎそらを みあげたら

ほしがキラカラ ひかってる

ほしがカラコロ ひびいてた