おりじなる童話 あめ

吉永光治のおりじなる童話

 あめ

ともこは ともだちの はるちゃんと のはらに はなを つみに いく やくそくをしました。

ともこが へやで ほんを よんでいると

「あらあら あめが ふりだしたわ」  

おかあさんが あわてて せんたくものを とりこんで きました。

「あーつ あめ」            

ともこは そとに でて そらを みあげました。 

「あめさん ふらないで」

おでこに あめが ぽつんと おちてきました。

「あめさんの いじわる」

「あめさん ゆるさないわよ」

ともこの ちいさい こえは そらまで とどきそうも ありません。

あめが ともこの ほっぺたを ぺんぺん たたき はじめました。

「あめさん あめさん とんでいけ」

てを ふりあげ あしを バタバタさせて さけびます。

でも あめは どんどん ふってきます。

「もう しらない」

ともこは そらと にらめっこです。

「あめさん どうして ふってくるの」

「あっ そうだわ あめさん おてんきで あそべなかったのね」 

ともこは にらめっこを やめました。

くちを おおきく あけて りょうてを そらに ひろげました。

くちの なかに あめが とびこんで きます。

くちを とじると くちの なかが じんじん ひびきます。

「あめさん くちの なかを こそぐって いるのかな」

「あめさん あそびましょ」

おててに あたって キンコンカン ともこは うたいだしました。

あめは あめでも そらのあめ
あまくも からくも ないけれど
おくちを あけたら キンコンカン
たのしい うたを うたうあめ
あめは あめでも そらのあめ
あまくも からくも ないけれど
おててを だしたら キンコンカン
うれしい うたを くれるあめ

あめが やみました。

「はるちゃんと はな つみに いこう」

ともこが そらを みあげると おおきな にじが かかって いました。