三宝法典 第二部 第二七項 慈愛の叱り

  慈愛の叱り

時に世尊、サーバッティー祇園精舎にとどまりたまえり。尊者ヤソージャを長となす五百のビクら、世尊を礼拝せんとして来たり、精舎のビクらと挨拶し、もの音高くたててふるまえり。
 
世尊はアーナンダに命じて、かれらを呼びたまい、
  
「おんみらはさながら漁師が魚を引上ぐる時のごとくさわがし。おんみら去るべし。われおんみらをしりぞく。わがかたわらに住むことなかれ。」と叱りたまえり。

かのビクらはそれより立ちてワッジー国を旅し、河のほとりに草ぶき小屋を作りて、雨期の安居に入れり。尊者ヤソージヤはビクらに告げり。

「法友らよ、われらの利益を望み、われらに同情したまえる世尊は、慈愛のあまり、われらを追放したまえり。われらは世尊が喜びたもうがごとく安居をなさん。」と。

かくてビクらはすべてより遠ざかり、怠くることなく熱心に精進して、この安居の間に、皆ことごとく三明を体得せり。

時に世尊は、サーバッティーよりベーサーリーヘ正導の旅をなしたまい。大林の重閣講堂にとどまりたまえり。

「アーナンダよ、われはるか河のほとりの明るくなるを見る。使を送りてかのビクらを呼ぶべし。」

かくてビクら、重閣講堂に来たれる時、世尊は不動三昧に入りて坐したまえり。

よってビクらも不動三昧に入りて坐せり。夜の初めを過ぎたる頃、アーナンダは世尊に申し上げたり。

「世尊、外来のビクら、久しく坐せり。世尊、外来のビクらに挨拶をたまわらんことを。」 されど世尊は黙したまえり。

夜の中ほどをすぎたる頃に、また夜は終わり、日のぼり夜明けたる頃に、アーナンダは二度び三度び申し上げたり。

時に世尊、サマーディより立ちて仰せられたり。

「アーナンダよ、おんみもしこれを知るなれば、答ゆる要なし。アーナンダよ、われは今、この五百のビクらと共に、すべて不動三昧に入りて坐したり。」と。
 
さらに世尊は、詩を唱えたまえり。
  「欲のいばらを克服し     悪口 殺生 束縛を
   越えたる者は山のごと    苦楽にゆらぐことはなし
   かれこそまことのビクと言う」と。

南伝二三巻一二二頁小部自説経第三ナンダ品
三明 宿命期-過去を知る・天眼明-未来世を知る・漏尽明-煩悩を滅した智慧
三昧、サマーディ(等持-精神統一、なり切り) 

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