三宝法典 第二部 第六項 三種の遠ざかり

 三種の遠ざかり

時に世尊、ギッジャクータ山にありてビクらに説きたまえり。
  
「ビクらよ、ブッダの教えにおけるビクらは、三種の遠ざかりを命ぜらる。正しき規律をたもちて悪しき規律より遠ざかれ。正しき見解をいだきて悪しき見解より遠ざかれ。煩悩を亡ぼして煩悩より遠ざかれ。これ三種の遠ざかりにして、この遠ざかりをなしとぐるビクは最上に達し、清浄にして、法の真髄を得たるものと言わるるなり。たとえば農家が田の米の充分に実りたる時に、すみやかに刈りとり、すみやかに集めてとり入れをなせば、最上のものとなるがごとし。
 
またたとえば、秋の陽光が虚空を貫き通し、すべての闇を追いはらうがごとく、よき弟子らはけがれなき法の眼を生じ、知恵を生じ、本体観と疑惑と迷信の三つの煩悩を捨て、むさぼりと怒りをへらし、欲をはなれ悪を去り、喜びと楽の満ちたる心の統一の第一段に入り、第二、第三、第四段と進み入る。かくのごとくして、かれらはふただびこの世界の迷いに立ち帰るべき煩悩より遠ざかるなり。」と。

南伝一七巻二九七頁増支部三集第五一掬塩品