三宝法典 第一部 第78項 罪の告白

罪の告白

時に世尊、コーサラ人の間をめぐりてパンカダー村にとどまりたまえり。その間に世尊は、道を修むる規律と用意とにつきて事こまかく教えはげまし、喜ばしめたまえり。この村に生まれて出家せしカッサパは、これを聞きて喜ばず、『このシャモンはつねに、あまりに事こまかく説けり』と腹立たしく思えり。
 
やがて世尊はパンカダーを去り、ラージャガハのギッジャクータ山にのぼりたまえり。カッサパは世尊の去りたもうや、後悔の心が生じたり。かくてギッジャクータ山にのぼりて申し上げたり。  
  
「世尊よ、先日パンカダーにて説きたまいしことにわれ不満を感じ、腹立たしく思えり。されど世尊が去りたもうや後悔の念起これり。世尊、罪がこの愚かなるわれを圧倒せり。世尊、この後、ふたたび犯さざるべく、わが罪を許したまえ。」
  
「カッサパよ、わが説きたる規律と用意につきて腹立たしく思いたるは、確かに罪に圧倒せられたるなり。おんみは罪を罪とみてわれに告げたり。われはおんみのためにこれを聞き入るるなり。
  
罪を罪とみてそれをこの後、ふたたび犯さぬために告ぐるとは、この教えの栄えゆくことなり。カッサパよ、もし上座のビクにして真実の学を好まず、学を受くる徳をたたえず、また学を好まぬ他のビクに学をすすめず、学を受くるビクの徳をたたえぬなれば、われはかくのごとき上座のビクに徳ありと語らず。
  
何ゆえなれば、師にしてもしかれに徳ありと語れば、他のビクはそのビクとまじわりその見解におちいるならん。その見解におちいるなれば永久の不利不幸となるなり。中座新入のビクにてもかくのごとし。われは学を好み、学をすすめ学を受くる徳をたたえる者を、徳ありと語るなり。かかる者とまじわり、その見解に従えばかれの永久の利益幸福となるがために。」
    
南伝一七巻三八七頁増支部三集第四シャモン品