民意を問うべきがベストの判断  岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■6月某日 沖縄は台風4号が通過中だが、強風も雨もほとんどない。微妙にそれた感じだ。メディア報道も気象庁も真面目に仕事しているのか(苦笑)。それはともかく、民主党自民党公明党の修正協議は消費税増税だけを先行することで野合が成立した。カンジンの税と社会保障の一体改革など民主党の看板政策は棚上げされたままである。一番ウハウハしているのは増税に執念を持ってきた財務官僚だろうが、まだ衆議院参議院での採決が決まるまでは枕を高くして眠れないだろう。民主党両院議員総会という関門もあるからだ。民主党内をはじめ、自民・公明以外の野党も、国民の大多数が反対している消費税増税を強行する手法は間違いなく民意無視の談合政治である。大飯原発の再稼働も野田総理が最終決断したが、こちらもカンジンの安全性に関する担保は完全に棚上げしたまま、である。地元自治体はともかく、周辺住民も大多数の国民も間違いなく早期の再稼働には反対のはずである。細野豪環境相の弁解も聞いてて気の毒すぎる。野田政権は悲願の消費税増税のために民意よりも自民党という大政党との野合を選択したのである。これが、果たして民主主義なのか。
 もっとも野田政権の反民主主義的やり方は、沖縄における垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの全島配備でもいかんなく発揮された。宜野湾市の市長に当選した保守派の佐喜真市長の呼びかけで17日には5200人が参加した反対集会が宜野湾海浜公園で開かれた。仲井真知事は参加しなかったが、大会へのメッセージをおくり、オスプレイ配備に強く反対する意向を打ちだした。米国本土だけではなく、アフガン、モロッコ、フロリダで相次いで事故を起こしたオスプレイは、試験飛行段階から事故が続発しており、死者も多数出している欠陥機である。しかし、米軍当局は巨額の開発費をつぎ込んだ次世代の垂直離着陸輸送機の欠陥をメンツ上も認めるわけにはいかないために、「機体の問題ではなく、人為的ミス」を調査不十分のまま一早く宣言して、事故正当化に必死である。しかし、米軍当局がいくら否定しても、原発稼働同様に安全性が確認できない以上、一時的な訓練先に予定されている岩国基地も、全島配備が予定される沖縄でも受け入れられる余地はない。それどころか、これまでの基地反対運動とはレベルの違う島ぐるみ反米闘争に発展する可能性すらあるはずだ。
 今週末は沖縄の敗戦記念日にあたる慰霊の日もやってくる。NHKも全国中継し、歴代総理も参加する国家イベントである。沖縄戦で犠牲になった軍民合わせて20数万人を慰霊する厳粛な儀式の日だが、不測の事態が起きないとも限らない。それくらい、県民の怒りに火をつけたのが危険なオスプレイ配備の電撃発表だった。米軍も防衛庁オスプレイの配備に関してはこれまではかたくなに否定と沈黙を繰り返してきた。まだしも、という言い方が許されれば、普天間基地だけではなく、ほぼ沖縄本島全域にオスプレイ墜落の可能性が拡大されたのである。普天間基地の負担軽減ではなく、紛れもない拡大だ。
 こうした沖縄の置かれた厳しい状況を打破できるのは、防衛省でも外務省でもない。政治主導による対等な対米交渉しかない。しかし、消費税増税原発再稼働にひた走る民主党執行部や自民・公明には不可能な交渉だ。消費税増税反対派は強行採決で消費税増税反対に政治生命を賭けて除名覚悟で反対票を投じることだ。鵺みたいな日和見的な中間派など入らない。政権交代時の公約じたいが完全に棚上げされた以上、民主党分裂ももはや必然的な流れである。民主党執行部と自民・公明が野合しても、国民の反発を買う事は確実である。最大野党の自民党との野合は異論を排する大戦翼賛体制でしかなく、次の解散総選挙ではどちらも有権者の支持を大きく失うはずである。今や、消費税増税原発再稼働、オスプレイ配備で民意を問うべきがベストの判断ではないのか。国民の大半もそう思っているはずだ。民主党解体・分裂が現実味を帯びる中、次善の策とはいえ、今や政界再編OKではないか。
2012.06.19