(6)真実を秘してはならない  吉永光治

 透水和尚にとって法門の世界は広大である。決して一宗一門にのみこだわるようなきゅうくつさは透水和尚にはなかった。つまり法に執着することはないのである。どこでも己が師として教えを仰ぐに足るものと信じた時には、広く推参して謙虚に教を乞うにちゅうちょしないのである。要するに、透水和尚の眼中は真実に向って押し出し続けることが生きる意味だったのである。平和のために戦争をしたり、国のために国民を苦しめたり、国の経済成長のためと称して増税したり、電気が不足しているからと原子力発電所を増やしたり、ヒューマニズムを口にして、人間、国家、民族の利益という空虚な題目のもとに、じつに堂々とやってのけるのである。ヒューマニズムという美しい名前にだまされてはならないのである。