おりじなる童話 しゃしん

吉永光治のおりじなる童話

しゃしん


「ともこ!」

おかあさんが よびました。

ともこは へんじを しません。 

あさから ともこは ぷんぷん おこっていました。

どうしてかと いうと それは このあいだの にちようびに どうぶつえんに あそびに いったとき おとうさんに しゃしんを たくさん うつして もらいました。

だのに その しゃしん ぜんぶ まっくろけで うつっていなかったのです。

「おとうさんの へたくそ!」

「すまん すまん」     

おとうさんは あたまを かきながら あやまったけど ともこは くびを よこに ふって だまって いました。 

「ともこ いるの」

おかあさんが かおを だしました。

「まだ しゃしんのこと おこってるの」

「ちがうよっと」      

「それじゃ ちゃんと へんじしなさい」

「いーだ」

ともこは くちを よこに ひっぱると へやを とびだしました。

「おばあちゃんの ところへ いこう」

おばあちゃんは はなれに ひとりで すんでいます。

ともこは おかあさんから しかられたり するとすぐに いくのです。

「おばあちゃん いますか」

えんがわから へやを のぞくと おばあちゃんが なにか みていました。

「はい いますよ」

ともこは えんがわから あがると おばあちゃんの よこに すわりました。

「しゃしん みてるの」

「そうですよ」

「これ だあーれ」    

「あー これは おばあちゃんの ちいさいときの しゃしんですよ」

「おばあちゃん こんなに ちいさいとき あったの」

「ともこ みたいに かわいときが おばあちゃんだって あったのよ」

ともこは しゃしんと おばあちゃんの かおを かわりばんこに みました。

「あれっ ここ しやしん はって ないの どうして」 

ともこは ゆびさしました。  

「あー ここね ここには だいじな しゃしんが はってあったの。でも いつのまにか なくなったの」  

「どんな しゃしんなの」

「そうね おばあちゃんが こどものころのね」 

「こどものころって」

「あー みえてくる はっきりとね」

おばあちゃんは めを つぶると にっこり しました。

「しゃしんは すぐなくなるけど こころの しゃしんは おもいだそうとしたら いつだって みられるから いいね。くもらないように こころの しゃしんは きれいにしていないとね」    

おばあちゃんは めを ぱっちり あけました。

「こころの しゃしんって なあーに」

「おおきくなったら わかりますよ」

おばあちゃんが ともこの あたまを なでてくれました。

ともこが おおきくなったら きっと おばあちゃんが いったことが わかるでしょうね。