おりじなる童話 おつきさん

吉永光治のおりじなる童話

  おつきさん


つきの あかるい ばんです。 

くまのこ コロくんが おかあさんに ききました。

「おつきさん いくつ あるの」

「なにいってるの おつきさんは ひとつですよ」   

「ちがうよ たくさん あるんだい」

「ほら みてごらん」

おかあさんは おつきさんを ゆびさしました。

「あれ おかあさんの おつきさんだよ。ぼくの おつきさん みにいこう」

コロくんは おかあさんの てを ひっぱって へやに いきました。

「みてごらん ぼくの おつきさんだよ」

コロくんは おつきさんをゆびさしました。        

「なにいってるの おかあさんの へやでみた おつきさんと おなじ おつきさんよ」

「ちがうよ ぼくの おつきさんだよ」

コロくんは おとうさんの へやに おかあさんをひっぱって いきました。 

「あれ おとうさんの おつきさんだよ」

コロくんは おかあさんの てを ひっぱって にわに でました。

「ほら みてごらん おさかなの おっきさんだよ」

コロくんは いけの なかの おつきさんを ゆびさしました。

「おつきさんが いけに うつってるのよ」

「ちがうよ おさかなの おつきさんだよ」

コロくんは ぷうーんと おこって おかあさんの てを はなしました。

「みててごらん」  

おかあさんは こいしを ひろうと いけの おつきさんに なげました。

いけの おつきさんが ゆらゆらっと ゆれると われて しまいました。

「あー だめだめ」

コロくんが おかあさんの てを ひっぱっているうちに くもが さっと おつきさんを かくしました。

「おつきさん きえちゃったあー」

コロくんは おおきな こえで なきだしました。

「どうしましょう」

おかあさんの むねが どきん どきんと なりました。  

コロくんは おかあさんの ひざに かおを うずめて ないて いました。

おつきさんが そっと かおを だしました。

おかあさんは ほっと しました。

「おつきさんよ みてごらん」

おかあさんの こえに コロくんは かおを あげました。

「あっ おつきさんだ」

いけの なかに おつきさんが きんいろに ひかっていました。

「やっぱり おつきさん いっぱい あるんだね」

コロくんは うれしそうに いけの まわりを はしりまわりました。

「さあ コロくんの おつきさん かえってくるのを まってるわよ」

「うん かえろう」          

コロくんは おかあさんより さきに へやに かえっていきました。

おかあさんは コロくんの へやに いくと もう コロくんは べッドに もぐりこんで ねむっていました。 

「コロくんの おつきさん おやすみなさい」

おかあさんは まどを そっと しめました。