おりじなる童話 ほしのおじさん

吉永光治のおりじなる童話

ほしのおじさん

「あっ わすれてきた」

ぼくは ばんごはんを たべてたら ふっと おもいだした 

ひるま いけに さかなつりに いって つりざおを わすれて きたんだっけ。

「ごちそうさま」     

ぼくは ごはんを すませると あわてて いえを とびだした。

「とられて ないかな」  

そとは もう うすぐらく なっていた。

そらを みあげると ほしが きらきら ひかっていた。            

まつばやしを かけぬけると いけが つきの ひかりで しろく ひかっていた。

「どこだったっけ」

ぼくは くさを かきわけ かきわけ つざおを さがした。

「あっ あった」  

つりざおは いけに ういていた。

「とられなくて よかった」

ぼくは つりさおを かついで かえろうとした。

すると     

「ポチャーン」        

みずが はねる おとがした。

「さかなかな」 

ぼくは すいめんを じっと みつめた。

「あれっ うきだ」  

きらきら きんいろに ひかりながら うきが うかんでいた。 

「だれかな さかなつってるのは……」

ぼくは うきの ほうに そっと あるいて いった。       

あたまに きいろい ぼうしを かぶった おじさんが うきを みつめて すわっていた。    

「おじさん つれる? 」

ぼくは おじさんの よこに いって きいた。          

「もうすこし またないとな」

おじさんは ちいさな こえで いった。

「あそこが よくつれるよ」 

ぼくは いつも つってる ところを ゆびさした。          

「ありがとう。でも ここがいいんだ」

おじさんは さっと つりざおをあげた。

「あっ えさ とられてるよ」

「いいんだよ」

おじさんは つりばりを きれいに ふくと いけのなかに なげこんだ。

「へんな おじさんだなあ」

ぼくが かえりかけたら       

「さあ はじめるか」  

おじさんは たちあがった。

「それ! つりあげるぞ」

おじさんは こえと いっしょに きらきら ひかるものを いけから つぎつぎに つりあげていった。

「なに つってるのかな?」

ぼくは おじさんを じっと みていた。

「さあ かえるか」

おじさんは そらに むかって つりざおを ふりはじめた。

「それっ」

おじさんが さけぶと つりいとが ひかって そらたかく のぼっていった。

ひかりの ほそい みちが できた。

おじさんは ひかりの みちを そらたかく のぼっていった。

「あの おじさん ほしの おじさん だったんだね」 

そらを みてください。

いつも たくさん ひかってる ほしたちは あの おじさんと のぼって いった ほしたちかも しれないよ。