三宝聖典 第二部 第七五項 チュンダの供養

チュンダの供養

かくて世尊、ボーガ城に留まりたもう時、アーナンダおよびビク衆を伴いてパー
バー城におもむきたまい、鍛工の子なるチュンダのマンゴー林に留まりたまえり。(これまさに二月十四日なり)

これを聞きたるチュンダは、世尊のみもとにまいり、礼拝せり。世尊は法話をも
って教え導き、励まし、喜ばしめたまえり。かくてチュンダは世尊とビク衆を明日の供養に招待なし、世尊はこれを許されたり。

チュンダの供養を食したまえる世尊は、残りの茸を穴に埋めしめ、法話をなして
立ちたまえり。この食事にて世尊は重き赤痢の病い生じ赤き血ほとばしり出で、死ぬるほどの激しき痛み起れり。世尊は正念を保ち、悩むことなくして痛みを堪えたまえり。

かくて世尊はアーナンダを呼びて仰せられたり。

「いざアーナンダよ、これよりクシナーラーにおもむかん。」

「かしこまりたり世尊。」

世尊、中途にて道より離れ、一樹のもとに近づきたまえり。

「アーナンダよ、おんみわがために上衣を四重にして敷くべし。アーナンダよ、
われは疲れたり。われは坐せん。」

世尊、席に坐したまいて仰せられたり。

「アーナンダよ、われに水を運びきたるべし。われは渇きたり。われは水を飲まん。」

「世尊、いま五百車、通りすぎたり。その河の水は少なく、車輪にてかき乱され、濁れるなり。世尊、かのカクッター河は遠からず。水清くしてここちよく、水冷たくして澄み、岸美しくして喜ばし。かしこにて世尊は水を飲み、手足を冷やしたもうべし。」

されど二度三度、世尊はアーナンダに水を命じたまえり。アーナンダは鉢をとりて河におもむけるに濁れるはずの水清く澄みて流るるなり。これを汲みてアーナンダは世尊に申し上げたり。

「不思議なるかな世尊、如来の大神通力なるかな世尊、かの河水少なく、車輪にて濁れるはずなるに、われ行ける時、清く澄みて流るるなり。世尊、水を飲みたもうべし。善逝、水を飲みたもうべし。」と。かくて世尊はこれを飲みたまえり。

この時、アーラーラ・カーラーマの弟子にして、マッラー族出身のプックサは、クシナーラーよりパーバーへ大道を進みつつありしが、一樹のもとに世尊の坐したもうを見て、みもとにまいり礼拝して賛歎せり。

「不思議なるかな世尊。実に出家がかくのごとく、心静かに坐したもうとは。」と。

また、覚めてあり、意識しつつも、五百車の近く通り過ぎるを見ず、聞かずして心静かなるを聞きてプックサは、喜びと信の言葉を述べ、一生涯の三宝帰依を申し上げたり。

光り輝く金色の一対の衣をプックサは持ち来たりて世尊に奉り、一つを着したまえる師は一つをアーナンダに着させたまえり。プックサ去りて間もなく、かの柔らかき絹の金色の一対を、世尊の体に着せまつれり。その時その衣は、光り輝きを失えるがごとくに見えたり。

世尊はアーナンダの言に答えて仰せられたり。

「アーナンダよ、まことに二つの時、如来の皮膚の色はきわめて清くうるわし。
如来が無上等正覚を成したる夜と、入滅をなす夜となり。」

「アーナンダよ、今夜半にクシナーラーなるマッラー族の、ウダバッタナ林のサ
ラ双樹のもとにおいて、如来の入滅はあるべし。いざカクッター河におもむかん。」

「かしこまりたり世尊。」

カクッター河にて水浴なしたまえる世尊は、ビクらに、チュンダの施食が利益なく功徳なしと思うのあやまりをさとし、その施食をたたえたまえり。

南伝七巻一〇三頁
南伝言二巻二二〇頁小部経自説経第八品にセンダン樹茸とあり、チュンダの件、五百車 水浴の件あり。

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