おりじなる童話 おともだち ほしいの

吉永光治のおりじなる童話

 おともだち ほしいの

くみの うちは ひろい のはらの まんなかに いっけん ぽつんと たって いました。

おとうさんも おかあさんも おしごとにでかけて ゆうがたまで かえって きません。

いつも くみは ひとりぼっちです。

「ともだちがほしい」

くみは ひろい のはらを まどから みながら おもって いました。

よる くみは めが さめました。

まどから つきの ひかりが ながれこんで いました。           

「トントン トントン」

なにか たたく おとが きこえて きました。

くみは そっと ふとんから でると まどまで いきました。

カーテンを すこし あけて そとを のぞくと いちだいの トラックが とまっていました。

おじさんたちが トラックから ざいもくを おろしています。

「あっ おうちを たてているんだわ」 

つみきを つみあげるみたいに みるまに いえがたって いきました。

「あっ おんなのこ」

いま たったばかりの いえの かげから かみに あかい リボンを つけた おんなのこが でてきました。

「あっ おかあさん」  

おかあさんは いえを みあげて うれしそうです。

おんなのこは おかあさんの まわりを くるくる まわりながら なにか しゃべっています。

おじさんたちは おかあさんに あたまを さげると トラックに のって どこかに かえって いきました。

いえに あかりが つくと おかあさんと おんなのこは ドアを あけて いえに はいって いきました。

「あした あのこと あそぼう」

くみは うれしくて むねが こくんと なりました。

あさ くみは めが さめると おかあさんの ところへ はしって いきました。

「おむかいの おんなのこと あそんで いい」

くみは めを おおきく ひらいて いいました。

「えっ おむかいの おんなのこ」

「そうよ」

「おむかいのって……おうちなんか たっていませんよ」

おかあさんは びっくりして いいました。

「うそよ わたし みたんだから」

くみは いえを とびだしました。

「あっ ない」

いえは どこにも ありませんでした。

くみは ゆうべみた おんなのこが どこかにいそうで よんで みました。

「あそびましょ あそびましよ」

へんじは かえって きません。

「あそびましょ あそびましょ」

くみは おおきな こえで よびました。

「はーい ちょっと まってね」

どこかで へんじが しました。

くみが ふりかえると おかあさんが たって いました。

「おともだちが ほしかったのね」

おかあさんは くみの あたまを そっとなでました。

くみは だまって こくんとうなずきました。          

おかあさんは つぎのひから いえに いることになりました。

くみの みた おんなのこって どこのおんなのこかな。