三宝法典 第二部 第四四項 たがやしバラモン

たがやしバラモン

時に世尊、マガダ国の南山、一バラモン村にとどまりたまえり。たがやしバラモンは種まきの時なれば、多くの傭人にその用意をなさしめ、食物を分配しつつあり。

時に世尊は早朝、乞食のためにその門前に立ちたまい、これを見てたがやしバラモンは言えり。

「シャモンよ、われは田をたがやし、かつ種をまきて食を得るなり。おんみもたがやし、種をまきて食を得べし。」

バラモンよ。われもまた田をたがやし、かつ種をまきて食を得るなり。」

さらにバラモンの疑問に答えて世尊は詩を唱えたまえり。

「信は種なり 行は雨    知恵はたがやす すきやくわ
 恥じるも 心の統一も   正しき念も わが農具
 言葉を正し 身を正し   衣食にてきぎの量を知り
 真理によりて 草を刈り  道を楽しみ 休息す
 努力は荷を引く牛にして  安らぎの地に 運ぶなり
 この地に至れば 戻り得ず 悲しみ悔やむこともなし
わがたがやしによるなれば 不死のニバーナはそのみのり
 わがたがやしによりてこそ すべての苦悩 解脱せん」

かくのごとく聞きたるバラモンは、食を鉢に盛りて、世尊にささげて言えり。

「シャモン・ゴータマよ、食を得たもうべし。おんみはまことにたがやす者なり。不死のみのりを得るたがやしをなすゆえに。

「詩を唱えて得たるものをわれは食せず。こは悟れる者の法にあらず。詩を唱えて得たるものを諸仏はしりぞけたもうなり。一切を成就なし、煩悩を滅し、疑惑を捨てたる者を供養なすには、他の食をもってなすべし。そは功徳を求むる者にとりて良田なるがゆえに。」

たがやしバラモンは、世尊の仰せのごとく、この食を水中に投じたれば、音をなして泡立ち煙りを上げたり。かのバラモンは身の毛のさか立つ思いをし、改めて深き尊敬の念をもって食をたてまつり、信者としての許しを乞い、のちに出家してアラハンの聖者となりたり。
 
南伝一二巻二九四頁相応第七バラモン相応第二ウパーサカ品
南伝二四巻二六頁経集一蛇品四耕田バーラドバージャ経

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