おりじなる童話 はるのしっぽ

吉永光治のおりじなる童話

  はるのしっぽ

「ぼく どうして しっぽ あるの」 

「どうしてって だれにでも あるのよ」

「ふうーん だれにでも あるのか」 

いぬの ワンくんは なんでも しりたがりやです。 

ワンくんは きょうも おかあさんに ききました。

「ほら おとなりの ねこさんだって あるでしょう」

「うん そうだね」          

「まーだ たくさん いるでしょう」

「えーつと うまさん うしさんだって しっぽ あったっけ。そうだ さがしに いこう」
ワンくんは そとに とびだして いきました。


しっぽ しっぽ  
しっぽのあるもの よっといで
ちっちゃいしっぽ おっきいしっぽ
みんな みんな よっといで

ワンくんは うたって いるうちに おおきな きのしたに きました。

「ぼく しっぽあるよ」   

ワンくんが みあげると くもざるくんが きのうえで ぶらんこを していました。

「くもざるくん しっぽ どうしてあるの」

「しっぽはね、きにぶらさがるためさ」

「くもざるくんの しっぼ いいしっぽなんだね」
 
くもざるくんは うれしくて あかい きのみを もぎって ワンくんに あげました。

ワンくんは くもざるくんと なかよく うたいながら のはらを あるいて いきました。


しっぽ しっぽ
しっぽのあるもの よっといで 
ちっちゃいしっぽ おっきいしっぽ 
みんな みんな よっといで。


「わたし しっぽあるわ」

うしさんが しっぽのさきを ふりながら よってきました。


「うしさんのしっぽ どうしてあるの」

「それはね うるさい はえをおいはらうために あるのよ」    
 
うしさんは しっぽで はえを おいはらってみせました。

「しっぽって やくに たつんだね]
 
ワンくん くもざるくん うしさんと のはらを あるいて いきました。

ワンくんの しっぽに くもざるくんのしっぽ 

くもざるくんの しっぽに うしさんのしっぽ 

うしさんの しっぽに うまさんのしっぽ 

うまさんの しっぽに やぎさんのしっぽ 


しっぽが つぎつぎに ながく ならんで いきました。

「わたしも なかまにいれて」
 
そらから こえがしました。

「だれだい」      
 
みんなは そらを みあげました。

「わたし はるかぜよ」

「はるかぜさん しっぽあるかい」 

「あるわよー みてごらん」
 
はるかぜが うたいながら のはらを はしりました。すると のはらいちめんに あか あお きいろの はなが さきました。

「うあっ はるのしっぽだぞ」

「はるのしっぽ おいかけろ」

「はるのしっぽ つかまえろ」
 
みんなは はなのさいた のはらを はしって いきました。    

よしなが・みつはる氏は1937年生まれ。日本人類言語学会会員 童謡詩人、童話作家。講演活動中。福岡市在住。