政治が国民の意志ではなく、官僚や財界、米国などの利害の為に運用されれば、この国はふたたび大悲劇に襲われる可能性がある。  岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

2013.01.06
■1月某日 正月休暇を終えてマニラから那覇にもどる。真夏のように暑いマニラから経由地の台北空港に着くと、冷え込みのために立て続けにクシャミを連発し、自分でも苦笑。やはり、台湾は熱帯のマニラと亜熱帯の沖縄の間にあるが、九州くらいの規模の小さい島にも関わらず、高い山々がそびえているためか、気候条件が特殊なのである。緯度からいえば、明らかに沖縄の方が上だが、冬は緯度の低い台湾の方が寒いというのも不思議な気象現象だ。しかし、これは紛れもない筆者の長年にわたる体感的経験であるから、間違いない。実際、台北空港より那覇空港のほうが全然暖かった。
 例年の事とはいえ、今年もマニラの正月休暇は楽しかった。やることは、街の探索、カジノ、ゴルフ、食事・飲み会、カラオケ周りくらいのものだが、仕事も一切絡まないし気楽で楽しい日々だ。むろん、仕事が絡まないので気楽という事もあるだろうが、フィリピンの社会や事件などの事情を現地の日本人に聞くと興味のつきない面白い話ばかりだ。日本だったら「どうして?」というような非常識的な事件が起きるのもフィリピンという国の特有のものなのだろう。マニラ滞在は気楽だったと書くと、どうせ沖縄でも似たような生活を送っているだろうだといわれるかも知れないが、沖縄滞在の場合には、地元のメディアや東京からやってくるメディア関係者にしても取材絡みの訪沖が多いので、どうしても仕事モードになりがちなのだ。その点、フィリピンは別段ライフワークにしているわけでもないし、個人的な興味を堪能すれば十分という位置づけも大きいのだろう。ま、そんなことを言っていても、沖縄に戻れば戻ったで仕事が待っている。つかの間の正月休暇気分を払しょくして、沖縄的日常生活を送らなければならない。
 沖縄にもどると、しばらく忘れていたオスプレイやKC130空中輸送機などが初月三が日も飛行を続けたということを知る。米国本土は当然としても、日本の在日米軍基地においても米軍は正月休みなのに、沖縄は別枠で飛行訓練というわけである。新聞報道によると、安倍新政権は防衛費を11年ぶりに増額するという。防衛費だけではなく、国土強靭化の名のもとに10年間で200兆円を公共事業に投下する政策も打ち出している。自民党政権赤字国債をさらに増やすつもりのようだ。野田政権の自爆テロ解散で漁夫の利を得た自民党の悪政が再び繰り返されると思うと、ウンザリである。兜町は、安倍総理誕生効果で株価が上昇して浮き足だっているが、これがいつまでも続くわけではあるまい。財務省主導で、野田政権が公約無視の消費税増税を決めたことなど、安倍総理の脳裏から完全に消えているのではないか。
 カンジンの脱原発の国策に関しても、安倍総理の脳裏から消えたようである。日本には商業用原発以外にも、発電はしない研究用の原子炉や核分裂の実験装置借り、運転歴50年を超える老朽化した原子炉があるという。脱原発を決断できない自民党の言い分は、電力が不自由したら日本経済にダメージを与えるという財界や官僚の意向を代弁したものだろうが、背後には米国の強い意向があることも見過ごしてはならない。今年の築地初競りで青森県大間水揚げの222キロのクロマグロに一億5千万円の値がついたという。ご祝儀相場もあるのかもしれない。しかし、その大間で自民党原発建設の再開を決めた。実際の原発稼働は先の話にしても、大間原発が出来れば、大間名物のクロマグロに大打撃を与えることだけは確かだ。今ですら、漁業も農業も3・11の福島第一原発事故で大打撃を受け、さらに風評被害にも悩まされている。政治が国民の意志ではなく、官僚や財界、米国などの利害の為に運用されれば、この国はふたたび大悲劇に襲われる可能性がある。年初に言うのもはばかられる類の話だが、政治家は地元選挙民に対してはともかくとして、国民目線で真剣に政策を遂行するという発想を捨て去っている。年初とはいえ、そのことだけは国民のためにはっきりと言っておきたい。