成熟社会の中で生きる方法論を考えるべき日本 学者も政治家も新聞も嘘をつく  世相を斬る あいば達也

2013年01月10日 
 筆者は、日本の経済成長が止まっているのは、半ば当然の現象だと考えている一人だ。多くの人々から、お前一人で考えていろ!と言われるが(笑)、ケラケラ笑って冗談のような顔をしているが、実に本気だ。先進諸国の民主主義と資本主義には、自ずと限界があるのだ。政治が悪い、マスメディアが悪い、アメリカが悪い、中国が悪い……。日本経済の閉塞を、誰かの所為にしようとするのだが、所詮21世紀の先進各国に成長の糊代など、ほとんど残っていないのは、真実だ。 

 ただ、自由主義、民主主義、資本主義に馴れきった人々は、成長神話を否定する勇気がないだけである。金融資本主義とグローバル経済には、政経分離の罠が仕掛けられていたのだ。つまり、衣食住の満足を得た先進諸国の人々が、それ以上の飽食を望んだことで、生き物として存在する人間の原理原則を歪めてしまったのである。当然のことだが、生き物としての人間プラス、社会的生き物としての価値以外の、無理矢理作って、市場に提供する、作られた欲望の虜になっていると言えるのだ。 

 最終的に人間の手で作られた虚構の欲望は、どこまで行っても偽物であり、自然発生的ではない。故に、その欲望はまだら模様を描き、多種多様となり、市場として必然性がなく、永続性も当然のようにない。発展途上国後進国の場合、衣食住と云う必然的欲望が満たされていないのだから、自然の欲望に収斂されているので、その欲望が満たされない限り、その国とか地域とか民族は成長できる。衣食住を満たされた、生き物としての人間が、それ以外の瑣末な虚構の欲望市場に手を出さず、生きる方法論でも考える動物であれば、世界は平和で幸福を分かち合えただろうが、競争心と云う欲望が、それを遮った。 

 他国より豊かになりたい、他人より豊かに幸福になりたい、競争と云う欲望が人間を成長もさせたが、どこか道が違っている感じがしてならない。こんな馬鹿げた考えにとりつかれること自体が間違いにも思えるが、必ずしも狂っているとも思えない。IPS細胞の研究により、多くの病気に光明が射したことにケチをつけるつもりはないのだが、だからどうした?と云う気分も捨てきれない。宇宙に人間が飛び立ち、そこにどれだけ滞在したか?その何処に夢があるのかも、筆者には理解不能だ。 

 その意味では、すべての政治家の言っている事は虚しくしか聞こえない。マスメディアの言う事も嘘だらけにしか聞こえない。学者や評論家の言う事など、殆ど嘘である。何故なら、人間の限界を知らずに語るからである。自ずと人類には限界があるのだと思う。にも拘らず、人類は知恵を持って社会を構成し、民主主義と資本主義と云うシステムを作り、自らその底なしの罠に嵌って行く様に見える。 

 適切な喩えかどうか判らないが、幸福のハガキから不幸のハガキにフェーズがチェンジした事実から目を背け、いまだに「幸福のハガキ」があると云う幻想に浸っている。つまり、富の再配分から、負の再配分が起きるのだと云う事実を人々に宣言する勇気がない限り、不幸は連鎖する。ただ、最近の日本の10代、20代世代には、幻想に未だ浸っている大人達の姿を見ながら、白々しい気分になっている兆候は頼もしい限りだ。 

 成長神話の幻想の中で、現実を受けとめる力量は若い世代の方が鋭敏に持っている。成長神話の幻想に生きる大人たちほど、彼ら若い世代の生き方を、情けないとか言って嘆くのだろうが、嘆きの対象となる彼らの方が正しい方向性を持っているのだと思う。おそらく、現在の大人世代に、自立だとか共生だとか主張しても、総論賛成各論反対論者の群れが出来るだけのような気がしている。既に、グローバル経済下では、政治がコントロール出来る時代は過ぎたのである。やろうとしても、極めて限定的な事しかできない。たしかに、若い世代ほど競争心は薄くなっている。性的欲望も薄くなり、独占欲も乏しくなっている。 

 しかし確実なことは、彼らの方が時代に対する感受性は強いのだ。そして、長く生きて、現在の大人世代がやっている政治や行政の影響を受けるわけである。今の経済を良くしようとして、最終的に彼らにツケを回すのなら本末転倒なわけである。無欲の彼らが大人世代のツケを払わなければならない謂われはない。老朽化資産を残してやったと言われても、それほど嬉しくはないだろう。夢の超特急リニア新幹線が出来たからといって、成長の限界を肌で感じている彼らに、そのニュースが福音であるとも思えない。 

 大人世代が、本当にしなければならないのは、野田らがやったような、将来世代にツケ回ししない等と云う嘘八百の消費増税(結局、若い世代ほど消費税を長く多く払うメカニズム)等ではなく、現役世代の富の配分を剥奪する事である。年金受給を出来るだけ減らす政策、病院に行く機会を減らす政策、長い気が素晴らしいことだと思えない政策……。そのような自己犠牲をやってから、若い世代にもツケを回すのが正論だろう。江戸時代の中期程度まで戻るのが、日本の心地よいポジショニングじゃないのか?フト思う今日この頃だ(笑)。