原発にしても、TPP参加にしても、安倍総理に解決能力があるとは思えない。  岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■12月某日 仕事おさめもだいたい終わり、後は大みそかと新年を迎えるだけだ。ホッとするといえばそのとおりかもしれないが、年間を通じてもっとも拍子抜けする時期ともいえる。だからといって、新年気分をじっくり味わう体験もほとんどしてこなかった。だいたい、大みそかも新年もほとんど日本にいない生活を送ってきたし、紅白歌合戦も見たことがない。今年も、明日から海外脱出なので、カウントダウンも異国で遭遇することになる。神社もお寺もない海外では、初もうですることもない。日本人なのに、日本人らしくない人生を送ってきたともいえる。むろん、悔いなどあろうはずはないが。
 それにしても、今年は年末の解散総選挙というアクシデントであわただしい師走だった。民主党最後の総理・野田佳彦自爆テロ解散で、こちらまでひきずりまわされる日々だった。結局、野田総理の最後の辞任記者会見すら開かれなかった。周りは民主党の壊滅的惨敗を予想していたが、野田本人は神風でも吹くと思っていたのかもしれない。選挙戦中は、政治の歯車を前に進めるのか,後退させるのかとバカのひとつ覚えのように繰り返していた。離党者続出で、ふんだんに余った政党助成金を新聞の全面広告などで湯水の如く使っていたが、現職閣僚から民主党右傾化の黒幕・仙谷由人まで落選した。新代表に海江田万里が選出され、細野豪が幹事長に選出されたことで、次の参議院選挙に多少の期待は残されているかもしれないが、歴史的な政権交代を成し遂げた民主党はこれで終わったと見ていいだろう。少なくと、沖縄の民主党は全滅である。A級戦犯菅直人野田佳彦仙谷由人の三人で、それに続くのが岡田克也松下政経塾出身の前原,玄葉などの親米・官僚派の面々だ。しいていえば、B、C級戦犯の連中ということになるだろうが。
 民主党が崩壊の危機に瀕している中で、勢いづいているのが安倍晋三新総理だ。日銀への無制限金融緩和を要請し、建設国債発行も目論んでいる。国土強靭化計画で、今後10年間で200兆円をつぎ込む意向も示している。こうしたゼネコン復活・バラマキ政策に目ざとい兜町は年初来の最高値株価を記録し、円安からも脱却したかに見える。世論調査においても、安倍政権に期待するとの声が5割から6割に達している。今回の総選挙は民主党に対してレッドカードが突き付けられただけで、自民党に対する期待度が高まったわけではない。タカ派安倍総理の政治介入を受けた日銀の白川総裁はストレスをため込んでいるとも伝えられている。大手メディアも安倍総理の大言壮語を無批判に紹介しているだけだ。赤字国債1000兆円という経済状態の中で、消費税増税を強行しても、安倍総理の経済政策が破たんしたら、被害を受けるのは確実に国民の側である。
 選挙中は明言しなかった原発に関しても推進の方向性を打ち出し、普天間基地辺野古移設も明言した。おそらく、親米一辺倒路線の安倍総理がTPPへの参加を表明するのは時間の問題だろう。原発にしても、TPP参加にしても、安倍総理に解決能力があるとは思えない。側近の出戻り元総理・麻生太郎財務相菅義偉官房長官岸田文雄外相、茂木敏充経産相山本一太沖縄担当大臣、小野寺五典防衛相、林芳正農水相甘利明経済再生相、いずれも期待できない官僚任せの政治家たちである。自民党安倍政権の本性が次々と出てくるのは年明け以降だろうが、期待感もワクワク感もない。新年の幕開けを前に、暗い気分の年末といわざるを得ない。本来ならば「いいお年を」というところだが、それだけは、とりあえずやめておこう(苦笑)
2012.12.29