真相は既得権を巡る攻防

消費税を上げる前にやるべきことは、公務員や国会議員の給料や歳費を減らすといった「自らの身を切る」ことではない。元祖民主党がいってたように、既得権に手をつけ社会の統治システムを変えることが重要だ。それらにまったく手をつけないで「とりあえず増税」というのが、野田や谷垣らの考えだ。

増税の根拠として耳タコなのが「国の借金1000兆円」というフレーズ。GDPの倍以上でギリシャよりヤバイ。しかし、これは会社でいえばバランスシートの右側(負債の部)の話で、左側(資産の部)にある650兆円に触れていない。GDPを超える国有資産があるの日本くらいだ。

650兆円の国有資産のうち道路やダムなどの有形固定資産は180兆円程度で残り470兆円は金融資産だ。その内訳は出資金や預り金などで、特別会計独立行政法人などに流入し、要は官僚の天下りネットワークの維持に使われている。この既得権に手をつけなければ、消費税を上げても意味がない。

消費税は「国民が広く薄く、公平に負担する」理想的な税だと説明されているが、まっ赤な嘘だ。斎藤貴男さんの『消費税のカラクリ』(講談社)をぜひ読んで欲しい。税としての欠陥、要は弱い者にシワを寄せる仕組みが余すところなく描かれている。財務省はなぜ、そのような税に固執するのか。


財務省固執するのは、結局、消費税が既得権に手をつけずにイージーに一時的な税収アップを狙えるからに他ならない。「増税の前にやるべきことがある派」(反増税派)が主張するようなことを実行されたら困るからだ。つまり、消費税増税派の正体は既得権維持派だということになる。

そもそも民主党は、自民党が官僚の既得権支配にベッタリからめとられてしまっていることを批判し、国家運営を官僚主導から政治主導•国民主導に取り戻そうと主張して政権交代を果たしたはずだ。しかし菅、野田と2代続けて財務相経験者が首相に就いたことですっかり様変わり、自民党と同じになった。

その両党のトップが極秘会談し、反増税派を排除し、大連立を組もうというのは、ある意味わかりやすい。増税派は話し合いでの解散を目論んでいるともいわれる。ボールは有権者に投げられる。有権者の選択眼が試されている。表向きは消費税賛成VS反対に見えるが、真相は既得権を巡る攻防なのだ。

山口一臣  @kazu1961omi