小沢一郎の幹事長辞任がすべての始まり

国民の圧倒的な支持で誕生した民主党政権は、一体どこで道を間違えたのか。なぜ、自民党にスリ寄るような事態になってしまったのか。
 すべては、2010年の参院選の直前、最大の実力者である小沢一郎が幹事長を辞めたことが始まりだ。あの時から、民主党の崩壊が始まったのは間違いない。
 そもそも参院選の直前、鳩山首相小沢幹事長のコンビが身を引いたのは、選挙に勝つためだった。ちょうど、鳩山首相が「普天間」で窮地に追い込まれ小沢幹事長の「政治とカネ」の問題が大きくなり始めた頃だった。
 小沢本人が朝日新聞のインタビューで「我々のこと(政治とカネ)が参院選に悪影響を与えちゃいかんということで、辞めることにした」と語っている。
 ところが、バカな菅首相が「消費税アップ」を公約に掲げたために、民主党参院選で大惨敗。参院過半数を失う「ねじれ国会」に陥り、政権運営が行き詰まってしまった。
 それでも、もしあの時 〈菅首相-仙谷官房長官-枝野幹事長〉のトップ3人が参院選敗北の責任を取って辞めていれば、民主党は立て直しが可能だったはずだ。ところが、戦犯3人は政権中枢に居座りつづけ、反省するどころか、大マスコミと一緒になって小沢一郎をワル者に仕立て、一気に「小沢排除」に動きだした。
 民主党政権がおかしくなったのは、それからだ。あれ以来、無意味な内ゲバがつづいている。
「問題は、なぜ仙谷一派が小沢排除で突っ走ったかです。権力を握るために、実力者の小沢一郎を抹殺しようとしたのは確かでしょう。しかし、それ以上に大きいのは、旧勢力と手を握ったことだと思う。小沢一郎は本気で『脱官僚支配』『対等な日米関係』を実現しようとしていた。だから、官僚、検察、アメリカ、大マスコミといった“旧勢力”は、総力を挙げて小沢一郎を潰そうとした。近くで見ていた仙谷一派は、旧勢力とケンカするより、手を握った方が得策だと計算したのでしょう。その証拠に、その後、仙谷由人は『官僚の守護神』と呼ばれ、菅内閣以降、既成権力に切り込む政策は一切、出てこなくなりました」(政治評論家・本澤二郎氏)
 野田首相が「消費税アップ」に血道を上げているのも、国民のためじやない。財務省のためだ。民主党は「脱官僚支配」を掲げて政権に就いたのに、いつの間にか正反対の政党になっている。
 
二重スパイ「仙谷由人」がA級戦犯
 
 しかし、いまでも民主党の党是である「国民生活が第一」を唱えつづけている小沢一郎に「党員資格剥奪」の処分を下し、政権交代の原点を忘れた油谷由人がデカイ顔をしているなんて、どう考えてもおかしい。
 小沢一郎が「歌を忘れたカナリアはいらない。僕らはまだ忘れずに歌っている」と訴えているのも当然というものだ。
 結局、仙谷一派のやってきたことは、民主党を瓦解させる「二重スパイ」のようなものだ。
 「政権与党の経験者がほとんどいなかった民主党は、政治の裏も表も知り尽くしている小沢一郎に頼るしかなかったのです。民主党を見渡して、政権運営ができる人物は彼しかいなかった。なのに、仙谷一派は、小沢一郎を排除してしまった。その結果、どうなったか。民主党政権を弱体化させ、自民党と官僚を利しただけでず。しかも、政策を官僚に丸投げしたために、民主党の良さをどんどん失っていった。
仙谷一派こそ民主党政権を崩壊させたA級戦犯です」(政治評論家・山口朝雄氏)
 民主党政権のテイタラクを見て、大マスコミは「政治の劣化が著しい」などとシタリ顔で論じているが、もとはといえば、大新聞テレビが検察とグルになって小沢一郎を攻撃し、追放したからだ。「政治の劣化」なんてシラジラしいというものだ。常識で考えれば、小沢一郎は4月の判決で「無罪」になるだろう。しかし、いまさら無罪になっても、もはや民主党を立て直すのは手遅れだ。
 民主党崩壊の裏でなにが起きていたのか、誰が悪いのか、国民は知っておくべきだ。
日刊ゲンダイ2012/3/2