沖縄県のワシントン事務所を 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■2月某日 なんで沖縄に来たのか、野田総理。県民に歓迎の雰囲気はほとんどない。既に内閣支持率の大幅低下に加えて、税と社会保障の一体改革には何の見通しもなく、早くも4月解散総辞職も囁かれ始めた総理大臣が沖縄に来ても存在感はない。これまでの総理や閣僚と同様に、「沖縄の負担軽減と辺野古移設のお願い」を繰り返すだけのことだ。せめてお土産に真部朗沖縄防衛局長と田中直紀防衛大臣の更迭くらい持って来い、だ。大幅な予算削減が必要な米国の沖縄に対する戦略性も大きく見直しを求められている。その最大のものがこれまでネックとなってきた「パッケージ論」を外したことだ。しかし、外務・防衛省は相変わらず普天間基地を固定させないために辺野古移設に執念を見せている。県も名護市も反対している中で、辺野古新基地建設を強行するとなれば、国家権力による暴力装置の行使が必要となる。流血の惨事まで覚悟して基地建設を進めることなど不可能である。国家権力の横暴さに対しては、沖縄は根強い島ぐるみ闘争で闘うはずである。先に防衛省が提出した粗雑な環境アセスに関しても、まだ気持ちのどこかで一抹の揺れを見せているとされる仲井真知事ですら、不可能と言っているのに、何をどうしようというのか。
 今回の訪沖で野田総理は、平和祈念公園での追悼、仲井真知事とのホテルでのよもやま話中心の夕食会、昼の正式会談、普天間基地視察、辺野古上空からの視察、在沖4軍司令官との意見交換、沖縄IT津梁パーク施設、経済団体との会合、民主党沖縄県連との会合などを予定しているが、カンジンの稲嶺名護市長との会談は予定なし。予想された通り、野田総理のお土産はなく、とおりいっぺんの表敬訪問にすぎなかった。仲井真知事も「県外移設」の主張を変えなかった。
 すでに米国が発表したグアムへの沖縄海兵隊4700人は2,3000人規模に縮小され、岩国基地への1000人規模の移設も、玄葉外相が即時否定している。海兵隊の移転先とされた豪州においても、沖縄の例を参考に海兵隊常駐による治安の悪化が懸念され始めている。どのみち、野田政権の普天間基地対策は頓挫したまま、先行きが見えない状態だ。つまり、日本の防衛・外務官僚に任せていても事態の打開は進まないはずだ。
 そこで、筆者は考えた。今回初めて交付された一括交付金で、沖縄県のワシントン事務所を設立すべきという案である。外務省や防衛省のウソで固めた情報などを信用していたら、沖縄の基地問題は何時までも解決しない。ここは、沖縄県が自主的にワシントンから直接情報を入手したり、米国での人脈づくりやロビー活動をやったりして、防衛・外務官僚の鼻を明かすような有利な外交条件を引出すことである。復帰40年、もはやその期は十分に熟しているのではないか。投資費用も3000万くらいから始めればいいのではないか。
 ちなみに筆者のこの意見を沖縄の有力者の何人かに話してみた。基本的にはほとんどの人が賛成だった。元沖縄県知事大田昌秀氏にも賛成してもらった。仲井真知事後援会の有力者にも聞いてもらったが、おおむね賛成ながら、外務省が強く反対する可能性があるとの指摘もあった。沖縄の過去の歴史においてもあったらしい。それはそうだろう。何事も外務省主導で、沖縄対策をやりたいというのが既得権益に胡坐をかく役所の発想なのだ。しかし、だからこそ、沖縄問題は霞ヶ関任せで、県民の意志は一切無視されたのではなかったのか。外務省や防衛省と喧嘩しても沖縄県民のための前進するための施策が出てくれば、万々歳ではないか。外交は国の専権時項ではあるが、その内実を支えるのは紛れもなく沖縄県民の意志そのものなのだ。
2012.02.27