間接証拠は状況証拠と同義 検察官役弁護士強弁しながら、露わに推認判決を期待  世相を斬る あいば達也

 先ずは面倒だろうが、裁判における「証拠」と云うものの概要を知る意味で、以下のウィキペディアからの抜粋を読んでいただこう。 

≪ 証拠(しょうこ)とは、ある命題(真偽不明の主張や存否不明の事実)の真偽や存否を判断する根拠となるものをいう。法律用語としての証拠は、証拠方法、証拠資料、証拠原因という3つの異なった意味を含んでいる。 

 証拠方法(しょうこほうほう)とは、事実を認識するための資料をもたらす有形物であり、裁判官による証拠調べの対象となる人や物そのものをいい、日常用語として目の前に出せる物としての「証拠」という用語法に近い意味を持つ。 

 証拠資料(しょうこしりょう)とは、事実を認識するための資料であり、裁判官が証拠調べにより証拠方法から得た内容をいい、証人の 証言や書証の記載内容のことを指す。
 
 証拠原因(しょうこげんいん)とは、証拠資料のうち裁判官が心証形成に採用したものをいい、当事者の立証活動は、自己に有利な証拠原因をできる限り多く裁判官に提供することを目的として行われることになる(刑事訴訟に関する用例であるが、「証拠不十分により処分保留のまま釈放」といった新聞でよく見かける表現は、この証拠原因の意味で「証拠」を用いていることになる。)。
 
 証拠能力と証明力 

 ある人・物を、訴訟において証拠方法として用いることのできる資格を、証拠能力(しょうこのうりょく)という。すなわち、証拠能力のない人、物、書面等については、これを取り調べて事実認定のために用いることはできない。 一方、ある証拠資料が、証明すべき事実の認定に実際に役立つ程度を、証明力(しょうめいりょく)、証拠力、証拠価値という。例えば、 証拠能力のある書面を取り調べて証拠資料が得られたとしても、その内容が信用できなかったり、証明すべき事実とあまり関係がなかったりする場合には、事実認定には役に立たないから、証明力が低いことになる。 

 間接証拠(かんせつしょうこ)とは証明の対象となる事実を間接的に証明する証拠のこと。情況証拠、状況証拠とも。犯罪事実を間接的に推測させることになるが、直接証拠と比較して犯罪事実の証明としては弱くなる。世間の注目を集める事件において被疑者が否認したまま直接証拠がなく間接証拠だけで立件された場合は、裁判がより注目を集める要因にもなる。≫(ウィキペディアより抜粋) 


 証拠と云うものの概要は判っていただけたと思うが、今回の小沢裁判においては、幸運にも石川議員のICレコーダ録音の揺るぎ難い証拠能力と、それを補完する田代検事の“混同証言”により、石川議員関連の調書は悉く不採用となった。しかし、池田光智元秘書の「先生に返済した4億円は報告書に記載しません」 と報告、小沢が「分かった」と答えたと言われる調書は採用された。此処に一縷の望みを検察官役弁護士は見るだろうし、行政司法一体の小沢への脅しが含まれているように感じる。 

 石川議員は毎日新聞に「裁判所が適正な評価をしたと思う。ただ、私の裁判では調書採用を却下しておきながら推認に基づき有罪、ということだったので判決を見守りたい」と語るように、推認推定有罪の可能性もゼロではないと認識するのが妥当だ。奇怪な点は大善裁判長の理屈に矛盾がある事だ。東京地検特捜部の組織的不当取り調べを糾弾しておきながら、池田元秘書の上記調書を採用した点だ。組織的不当取り調べが田代検事一人ではないと明確に断じながら、池田元秘書の取り調べは正当に行われたとする理屈は常識的にあり得ない。ここが罠である可能性は未だある。郷原氏はそこには言及していないが、筆者は一抹の違和感を感じた。 


≪ 小沢氏公判での証拠却下決定、注目すべきは、虚偽公文書作成の範囲と偽証の認定、特捜部の組織的な不当取調べの認定 
 本日の小沢氏の公判で、東京地裁大善文男裁判長は石川知裕衆議院議員ら元秘書3人の供述調書の多くについて証拠採用を却下した。元代表の関与を認めた石川氏の調書についても、任意性、特信性を否定して請求を却下した。 
 決定書全文を入手して読んだが、石川氏らの供述調書の請求を却下したという結論もさることながら、重要なことは、その理由の中で、取調検察官の田代検事の法廷証言の信用性についても踏み込んだ判断をしたことである。特に、田代検事が市民団体から虚偽公文書作成罪で告発されている石川氏の取調べ状況についての捜査報告書の問題に関して「記憶の混同が生じたとの説明はにわかに信用できない」と述べているのは、事実上、田代検事の偽証と虚偽公文書作成の犯意を認めたものと言え、東京地検の告発事件の捜査に決定的な影響を与えるものと思われ る。 
 しかも、決定書では、その田代検事の後に石川氏の取調べを担当した吉田副部長も取調べで石川氏に圧力をかける行為を行っていたことを認め、 田代検事の不当な取調べが、個人的なものではなく、組織的なものであったことまで認定している。 
 今回の証拠決定は、検察、とりわけ特捜検察にとって衝撃的なものであろう。 市民団体の告発事件は、最高検から東京地検刑事部に回付されたとのことだが、東京地検刑事部は、今回の東京地裁の決定を受けて、早急に、捜査に着手することになるだろう。≫(郷原信郎ツイッターより) 


 たしかに、地検特捜部の佐久間元特捜部長や大鶴基成現弁護士はヒヤヒヤなのは事実だろうが、だからと云って溜飲を下げて済む問題ではない。小沢一郎裁判で、無罪の判決が出るまで、糠歓びは厳に慎まなければならない。石川議員が語るように、二匹目のドジョウが現れる事も充分にあり得る。弘中弁護士は「重要なものは落ちた。弁護側にとって優勢」、「油断して気を緩めないようにしたい。有罪の方向に判断する余地がないか、これから検討する」又「池田元秘書の調書の一部は小沢一郎との共謀を認める具体的内容ではない」 と語っている。しかし、ミスター推認登石を現実に見ている筆者としては、池田調書を証拠に、状況証拠を積み重ねる検察官役大室弁護士の執念を感じる。現に、検察官役弁護士の大室氏は「間接証拠だけでも、充分有罪を立証できる」と語っている。

 事実は、小沢一郎の政治生命抹殺に動いた「人格破壊工作」を画策した勢力及び金魚のフン並にそれを利用、便乗した勢力と、小沢の孤独な闘いなのだから、敵がどこに潜み、何処から飛び道具を出してくるか判らないのである。石川議員の公判では弁護士の稚拙さもあり、ICレコーダーの証拠能力を十二分に生かせなかった失敗弁護だった訳だが、検察の起訴と検察審査会起訴の違いも大きいのだろう。 

 正直筆者は、最高裁事務総局の裏事情が色々ほじくられ、これ以上の探偵行為をやめさせたい状況に追い込まれていると推測出来るので、何処かで手打ちをしたい状況なのだと思っている。検察審査会の事情も相当暴かれている。行政と司法の癒着が此処までほじくられたのは、日本の政治司法史上初であり、松本清張も真っ青なのである。政権交代は殆ど意味をなさなかったが、小沢支持・民主党議員の熱意ある活躍やネットメディアの力を軽視した、既存の一部勢力の過ちであったのだろう。

  その点で、小沢無罪で一件落着させたいところだが、此処に野田佳彦の財務教が加わる事で、話は複雑になる。野党が裁判で無罪になりそうなので、再び証人喚問と騒ぎ出し、消費増税法案とのバーターで、小沢一郎人格破壊工作を再燃させないとも限らない。一難去ってまた一難である。野田・菅・岡田・仙谷の事だ、夢よもう一度とばかり、小沢生贄工作を企てないとも限らない。マッチポンプで小沢に揺さぶりを掛け、衆議院通過に造反しない言質を輿石を通じて取ろうとするかもしれない。 

 最終的に、小沢一郎人格破壊工作はまだまだ続きそうだが小沢一郎には踏ん張り続けて貰いたい。政治で抹殺が加えられ、裁判では検察から、検察審査会から、最高裁事務総局から狙われる。なんとも溜息が出るほどの攻撃だ。コラムを書き続けるだけでも疲労困憊すると云うのに、実際に矢面に立って頑強に闘い続ける小沢一郎には、ほとほと感心と敬服を憶える。どのような選択を小沢一郎がするか、それは小沢一郎の民主主義における権利だ。どのような選択であり、どのようなその後が起きようと、筆者は小沢を支持する。