組織のケジメをつけることもできない機能不全 岡留安則の「東京-沖縄-アジア」幻視行日記

■2月某日 東京から帰沖以来、宜野湾市長選の話題でもちきり。伊波洋一氏がなぜ敗北したのか、佐喜真淳氏がなぜ勝利できたのかという点だ。自民党県議から転身した佐喜真氏は、もともと辺野古新基地推進派。沖縄自民党県連が辺野古から県外移設に方針転換した際も、最後まで反対派だったという。父親も元宜野湾市の議長を務めた軍用地主。佐喜真氏はフランスに7年ほど滞在し、空手を教えていたこともあるという。仲井真知事も応援したし、民主党政権も伊波支持ではなく、自主投票の立場を堅持した。「そうぞう」や国民新党も自主投票。その結果、900票差での勝利だった。選挙戦終盤の佐喜真陣営の追い込みは凄まじかったらしく、官邸機密費や防衛予算などの実弾が飛び交ったのではないかとの噂は飛び交ったが、裏付けは取れていない。佐喜真氏の当選で、辺野古新基地に最後の望みを託する防衛省や野田政権は保守系市長の誕生を歓迎の意向だ。今回の選挙戦のように従来の革新共闘が機能しなくなった現状では、6月の沖縄県議会選挙も保守系候補が逆転勝利するのではないかと見る向きも多い。民主党政権が大きくブレたことで、政権交代を実現した前回の衆議院選挙の再来はかなり困難になったのではないか。
 そんな状況に意を強くしたのか、総理就任以来、訪沖を躊躇していた野田総理が沖縄にやってくる。しかし、沖縄県民は、前任の田中聡防衛局長の沖縄を見下した不適切発言を忘れてはいない。宜野湾市長選においても、真部沖縄防衛局長が宜野湾市内に住む防衛局職員と親戚を集めて「講話」なる選挙への呼びかけを行った事実が発覚しても、いまだに処分もされていない真部局長。つい先日も堂々と、県庁で副知事と会談までやっている。更迭寸前まで行ったのに、厚かましすぎはしないか、真部局長。
 それもこれも、野田政権が組織のケジメをつけることもできない機能不全に陥っているからだ。真部局長は辺野古新基地建設一筋で尽力してきた沖縄担当の防衛省エースだし、そう易々と更迭できない内部事情もあるのだろう。それよりも、就任以来、度重なる失言や無知無能ぶりを発揮しても、どこ吹く風の田中防衛大臣の辞任が先決との意見もあるはずだ。沖縄県民的にいえば、真部局長も田中防衛大臣もいらないというのが当然な気持だろう。
 そしてあまりにも意外だったのが、地元紙の沖縄タイムス琉球新報がスクープした、環境アセスの調査会社に防衛省天下り組が入り込み、防衛省との窓口を務めていた事実だ。環境アセスが防衛省の作戦通り、思惑通りに進められたことの証明にもなる。2月14日付の沖縄タイムスによると、天下り業者が9割を受注していたという。その額は6年間で86億円という巨費だ。特に、関係の深い東京に本社のある「いであ」という会社は51億円、関連会社も含めると約58億円だ。これじゃ、防衛省キックバックが流れているのではないかと疑いたくなる。私腹を肥やしたというよりも、その金が名護市の建設推進派の運動資金に流れていた可能性もあるのではないか。どこか、徹底的に調査報道してくれ! 
 問題は、これだけのスキャンダルなのに、沖縄の地元紙以外では、全国紙も国会でも追及されないままに放置されていることだ。そんなことでいいのか、ニッポン。野田総理が来沖したら、この点をきちんと調査して釈明すべきである。でないと、野田総理もこれまでの閣僚同様、招かざる客になることは確実だろうと、諦め気分で提言しておきたい。
2012.02.17